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日本一のハラコ(イクラ)の醤油漬け

[神楽市場]

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この日、僕は日本一のハラコ(イクラ)がどう作られているのかを
勉強させていただくために
新潟県村上市 『千年鮭 きっかわ』さんに向かいました。

村上では、いくらではなくハラコと呼ばれておりますので
以下、『ハラコ』に統一いたします。
ちなみに、厳密に言うと
筋子(すじこ)状のものが『ハラコ』で
いくら状のものが『ハララ』や『ハララコ』と呼ばれています。

きっかわさんに来るのは15年ぶりになります。
僕も寿司職人なので、ハラコの仕込みや醤油漬けは知っているつもりです。
でもなぜ、きっかわさんのハラコの醤油漬けは、日本一と言われるのか?
この目で確かめてきたいと思います。

今回その技をご丁寧に説明してくださったのは担当の小林さんです。

まず、銀毛(ぎんけ)と ぶな毛について。

【銀毛(ぎんけ)】は、
秋に産卵のために川を遡上する前に、沖合(海)で漁獲される鮭のことです。
秋鮭とか、銀毛鮭とも呼ばれます。
この時期の鮭は体表が銀白色を帯びるので、この名がついています。
脂がのって味も良いとされています。

【ぶな毛】は、
秋に川を遡上している途中で獲れる鮭で、
婚姻色を帯びて体色が濃くなった鮭です。
ブナの葉の色に似ているところから、またはブナの葉が色づく頃と時期が同じだから、こう呼ばれています。
ぶな、ぶな鮭とも呼ばれています。

色は銀から婚姻色になり、最後は黒ずんだ紫色になっていきます。

さっそく、
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まずはメス鮭の腹を開いていきます。

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腹の中に優しく手を入れて

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ハラコを取り出します。

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鮮度も抜群の鮭ですので、ハラコの鮮度も抜群です。
鮭の卵は11月の上旬から3週間、が一番大きく成熟し、旨味が一番濃くなるそうです。
きっかわさんでは、鮭の体に対して、
18%に成熟した大粒で最上の卵のみでハラコの醤油漬けを作るのだそうです。

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『ルビー色の美味しそうなイクラですねー!』
なんて良く言われるそうですが、ルビー色はNG。
オレンジ色の乳白色のハラコが一番美味しいそうです。

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次の鮭。
これを見て違いわかりますか??
腹を開く前から腹の中の卵(ハラコ)の状態がだいたいわかるそうです。
まだ未成熟なのか、醤油漬けにはベストな状態なのか、成熟しすぎてしまっているのか。
若すぎると粒が小さくて卵が固い筋子に、
成熟し過ぎると卵がバラけてしまい、皮も固く、旨味も少ない状態に。
卵が小さめのものは味噌漬けや粕漬けに商品化することで
醤油漬けは最高なハラコのみで仕上がることになります。

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ちなみにこれは、ハラコ止め。
鮭を鮮魚のまま丸ごと発送する時などに
ハラコでパンパンのお腹をした鮭の肛門から卵が飛び出してしまうため
これを刺しておくという道具です。

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腹の部分の皮が薄くて、触ってみると柔らかいこの鮭。
お腹を開くとすじこの薄皮は破れていて産卵直前の状態でした。
これだと成熟しすぎてしまっています。
こういうものを『バラコ』と呼ばれていました。
逆にお腹がパンパンなのは、卵がバッチリ、
これも触ってすぐにわかるそうです。

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なにやら、ハラコを取り出したあと、
入れる入れ物がいくつか別れているようです。

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あ! 食べた!!
なんと、一腹、一腹すべてのハラコの粒を口にし、
味を判断していました。
一番充実していると感じるのは1年のうちで3日間ほどだとか!
そして、ハラコのレベルを5段階に分けて選別されていました。
粒の大きさ、皮のやわらかさ、うまさ、それぞれすべて個体差があるので
それを目視と味見で選別している姿を見たときに、
この時点で、自分が仕込むいくらの醤油漬けとの格差を感じました。
そもそも、ハラコの素材選びの次元が違います。

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これ一粒一粒が命だとは、わかってはいますが、
改めてじっくり見ていると、感謝の気持ちがどんどん湧いてきます。

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これと、

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これ、食べ比べてみな。

あとこれも、
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え!いいんですか!
ほとんど同じに見えますが^^;。。

うわ!
違うーー。
一回り微妙に大きい方の粒は、
皮もちょうど良い柔らかさで、旨味が濃い。
これだけ選別された中の、最高ランクの卵だけが
きっかわさんの醤油漬けになるのか!

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手前は普通の包丁ですが、奥のやつ、、

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刃先が尖ってない。
まさか!!?
『これは、鮭のハラを開く時に、一粒も卵を潰さないようにと先代が特注で作った包丁なんだよ。』
こんなところまで、鮭に対しての敬意が表れていました。

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きっかわ社長、小林さん、ご丁寧な実演と説明ありがとうございました。

このあとはハラコの下処理ですね。

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ハラコ仕込みには最適な道具、金網。
網目は1cm角。

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ハラコを網にのせたら

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手でスリスリして網目から卵を落としていきます。

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すべての卵がきれいにとれました。

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次にハラコの下処理として薄皮剥きを最初にします。
大抵はお湯を使って薄皮を浮かせて取りやすくしますが、
きっかわさんでは、お湯は絶対に使いません。
お湯を使ってハラコを仕込むと旨味が抜けてしまい
本来のハラコの旨味がなくなってしまうからです!!

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井戸水の冷たさの塩水で数回洗って薄膜をとり、

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さらに、糸のようなこのレベルの筋すらも醤油漬けには入れません。
すべ手作業で取り除いていきます。。。
そこまでこだわっていたなんて。。
日本一のハラコの醤油漬けは信じられないくらい繊細な部分までこだわっています。それも、召し上がる方のことを考えてのこと。

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すべての細かな筋まで取られた状態の綺麗なハラコです。

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あれ?この真っ白くなったハラコはなんだろう?
これは、『水はらこ』というもの。
醤油漬けに使用する厳しい審査に合格しなかったものなどは
冷たい水に3日間漬けて固くして
鮭の飯寿司(いずし)に使われます。
また、村上のお正月、お雑煮には鮭の身は入れずこの水ハラコが入るそうです。

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ザルで水気を切ったら、鮮度が良いうちに瓶に入れていきます。

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50年伝わる秘伝の『かえし醤油』がつけ汁です。
(原材料は醤油、本みりん、かつおぶし、しいたけ、酒、酢)
卵自体の味は全盛期とそうでない時で変わります。
先代は卵の状態によってつけ汁の味を調整していたそうです。
先代が引退する際、そのレシピは
息子(現社長)だけに特別に引き継がれたのかと思いきや、
実は最後まで教えてくれなかったそうです。
きっかわ社長は考えました。
美味しい全盛期の卵に照準を合わせてレシピを作り
卵の味が負けちゃうときは煮切ったお酒で味を調整したりするなら、
美味しい全盛期の卵だけ選ぶことにすれば、つけ汁の味を変えなくてもいいではないか!と。
今では、ハラコの旨味を存分に引き出すような味のつけ汁に
仕上がっていました。

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最後まで丁寧に、卵を潰すことなく、満遍なくかき混ぜていきます。

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さらにヒタヒタになるまでつけ汁を加えます。

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漬けて1日経つと味が馴染んで美味しいそうです。

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社長には、こうして毎日、味見用のハラコの醤油漬けが
小瓶で現場から届きます。最後までチェックを怠りません。

ハラコにかける細か過ぎるほどの作業と労力と想いが突き抜けておりました。
参りました。

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この数量限定の『ハラコの醤油漬け』、
神楽市場のホームページよりお取り寄せいただけることになりました。
この美味しさは、是非、村上旅行で!
すぐに行けない方は、この感動を是非ご自宅で体験してみてください。
醤油漬けは1日ごとに卵粒が硬くなってゆきますので
できればその日のうちにお召し上がりいただくのがベスト。
すぐにお召し上がりにならない場合は冷凍をおすすめいたします。

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いくらの軍艦寿司

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いくらの手巻き寿司