ブログ

ふなずし・フナズシ・鮒寿し・Funa Sushi

[すし・sushi湖魚]

IMG_5541.jpg

鮒寿しを漬けたことのある寿司職人は、どれだけいるのだろう?

普通に修行をして、独立してお店を開く流れなら、鮒寿しを漬ける機会は
ほぼ無いと思います。

しかし、
お寿司のルーツである鮒寿しを知らずして、自分がやりたいお寿司屋はできない。
それが酢飯屋の考え方です。

とはいえ、鮒寿しを漬ける機会なんて、そうそう来ないと思っていた矢先。

堀田雅湖さんより、夢のようなメールが届きました。

『鮒寿しの漬け込みに行きませんか?』

そして、2016年7月下旬

自分でフナズシを漬けてみたい!
という願いが叶いました。

場所は滋賀県彦根市。

鮒寿し、漬け込んできました。

hunaIMG_5542.jpg
たっぷりの地元産米。

hunaIMG_5544.jpg
フナズシを漬けるためには必要不可欠なお米を
どんどんどんどん研いでいきます。

hunaIMG_5545.jpg
どんどんどんどん浸漬(しんせき)していきます。

hunaIMG_5549.jpg

炊き上がったご飯は飯台で冷ましておきます。

hunaIMG_5550.jpg

suIMG_5656.jpg
こちらが塩漬けにされた二ゴロブナ(エラと内臓は塩漬け前に除去してあります。)

suIMG_5657.jpg

suIMG_5659.jpg
まずはこの塩を洗い流します。

suIMG_5666.jpg
このあとフナを洗う工程で
金属製歯ブラシのようなものが必須アイテムです。


IMG_5679.jpg
塩を洗い流したニゴロブナは
すでに綺麗な状態に見えますが
このまま漬け込むと雑菌が乳酸菌とバトルしてしまい
失敗フナズシになることも。
1年以上、常温で保管して乳酸発酵させるのがフナズシの基本ですので
雑菌は無いにこしたことがないわけです。

IMG_5667.jpg

IMG_5682.jpg


suIMG_5680.jpg
この部分、エラ蓋が盲点だと僕は思っています。
一見綺麗に掃除してあるように見えますが、
隅から隅まで綺麗にしないとここに雑菌がいるはず。

suIMG_5669.jpg

IMG_5670.jpg
エラ蓋の奥を覗くと綺麗なオレンジ色の卵が見えました。

IMG_5671.jpg
ウロコ1枚無い状態の綺麗な皮目ですが
この黒いうねうね。ウロコがびっしりとこの部分に付いていたわけですが
この黒いうねうねしたものをいかに綺麗に取るかで
フナズシの仕上がりが変わるということで
このあと、このうねうねを先ほどの金属ブラシでこすり落としていきます。
一度やるとわかりますが、大変大変根気のいる作業で
全く取れないんです。。


IMG_5683.jpg
背びれ部分の細かな隙間にも雑菌が残ってはいけないので
ここも念入りに磨いていきます。

IMG_5672.jpg

suIMG_5685.jpg
腹ビレも

IMG_5673.jpg

suIMG_5684.jpg
尾ビレも。

IMG_5674.jpg


suIMG_5686.jpg
脳天部分

IMG_5675.jpg

IMG_5677.jpg
口や目の周り

IMG_5693.jpg

ゴリゴリ磨いていきます。

IMG_5695.jpg

suIMG_5697.jpg

IMG_5698.jpg

IMG_5690.jpg

IMG_5691.jpg

IMG_5692.jpg

IMG_5699.jpg

IMG_5700.jpg

suIMG_5688.jpg
あのうねうねしていた部分、
こんなに綺麗になるんですね。

suIMG_5701.jpg

綺麗に洗ったフナズシを風通しの良いところで
数時間陰干しします。

IMG_5708.jpg

時間をかけて磨いたニゴロブナ
ついつい見とれてしまいます。

suIMG_5710.jpg

suIMG_5711.jpg

IMG_5712.jpg
雑菌が怪しかったエラ蓋もこれだけ綺麗にすれば大丈夫だろう。

suIMG_5713.jpg

IMG_5714.jpg

IMG_5715.jpg

IMG_5707.jpg
あのうねうねをしっかり取らずに干している方もいます。

IMG_5716.jpg

IMG_5717.jpg

IMG_5718.jpg

IMG_5719.jpg

今回、地元の方々が各々のフナズシを漬け込むという機会に
自分もご一緒させていただいたわけですが
昨年作った美味しいフナズシがあるとのことで
振舞ってくださった尾田さん。

IMG_5720.jpg
飯(いい)

IMG_5721.jpg

IMG_5722.jpg
振舞ってくださる尾田さん。
僕のフナズシの先生です!

IMG_5723.jpg
僕はハッキリ言って、衝撃を受けました。
フナズシってこんなに美味しいのか!!!!!

ただの臭い珍味。
みたいな扱いをされているフナズシですが

乳酸発酵の旨さの極みです!

これだけの手間をかけて、
さらに何年も寝かせる工程も調理時間とすると
高価になってしまうのは仕方のないこと。

しかし、
この味を味わったとき

ただの臭い珍味ではなく、
上質な果物の香りがする超高級発酵食品ではないか!!!

と心打たれました。

僕は尾田さんの美味しいフナズシの作り方を
じーーーーっと見ていました。
その丁寧な仕込みがこの美味しいフナズシになるんだ。

僕の漬けたフナズシもそれと同等の仕事をしたはず。
きっと美味しい『俺のフナズシ』が出来るに違いない。
そう確信しました。

suIMG_5725.jpg

suIMG_5727.jpg
りんごと合わせて食べて見て。と。
合うーーーーーーーーー!

もう、自分の中でフナズシは
あれときっと合うだろう、あのお酒と合うだろう。
頭の中がぐるぐるし始めました。

IMG_5732.jpg

フナズシが乾くまで
漬け樽の中に入れ込む縄を編みます。

suIMG_5734.jpg

IMG_5737.jpg

乾いたニゴロブナの青がなんとも言えない美しさです。

suIMG_5738.jpg

IMG_5739.jpg

suIMG_5740.jpg

suIMG_5741.jpg

suIMG_5742.jpg

suIMG_5743.jpg

suIMG_5744.jpg

IMG_5745.jpg
フナズシを干している場所の目の前はこんな感じ。
自然の風と程よく暑い気温がフナズシを
美味しく乾燥させてくれます。

suIMG_5769.jpg
乾いた二ゴロブナを取り込んで

suIMG_5770.jpg
滋賀県の銘酒 岡村本家さんの金亀を手洗いに贅沢に使用。

suIMG_5774.jpg
桶に大きなビニール袋を入れて、そこにごはんを敷き詰めます。

IMG_5775.jpg
フナを桶に入れる前に
エラの中から、口の中までもお米を詰め込みます。
浸かりムラのないように。

IMG_5776.jpg

suIMG_5777.jpg

suIMG_5779.jpg

IMG_5784.jpg

ご飯を詰め込んだニゴロブナを桶に入れて

suIMG_5785.jpg

上からご飯をかぶせていきます。

IMG_5788.jpg

これを何度も繰り返して、
なるべく隙間のないように詰めていき封をします。

IMG_5789.jpg

IMG_5790.jpg

均等に圧がかかるように蓋をして
仕込み終了です。

IMG_5791.jpg

IMG_5794.jpg

suIMG_5800.jpg

今回、機会を繋いでくださった、堀田雅湖さん
お米のプレゼントと直前の精米など、何から何までお世話になりました尾田さん、彦根のお母さん青山さん。
美味しいフナズシになることを祈りつつ、
この度は貴重な経験をさせてくださいまして
本当にありがとうございました。


hunashiIMG_3335.jpg
『俺のふなずし』があの中で生きています!

呼び名が乱暴ですね。

『自家製ふなずし』。

hunashiIMG_3337.jpg

hunashiIMG_3338.jpg
ふなずしの身の部分と
それを漬けていた飯(いい)。

hunashiIMG_3340.jpg

hunashiIMG_3341.jpg
ふなずしを小分け真空パックして、
好みの発酵状態で使いたい分だけ使える便利な時代に感謝。

hunashiIMG_3342.jpg
その後は冷凍庫で保管して発酵をストップさせています。

酢飯屋の一品料理のメニューに
フナズシがありましたら是非、お試しくださいませ。

hunaIMG_0983.jpg
フナズシをパーツごとに分けて、
お客様ごとに適量にてご提供させていただきます。
ちょろっとだけチャレンジしてみたい方、
バクバク食べたい方、色々ですので。

IMG_6561.jpg
フナの身の部分、
メスとオスの味の好みはあなた次第です。

IMG_6562.jpg

hunaIMG_6565.jpg

hunaIMG_6570.jpg
フナの卵

IMG_6571.jpg
フナのヒレ

hunaIMG_6573.jpg
フナズシを漬けていたごはんの部分のみ『飯(いい)』と言います。

IMG_6574.jpg
フナの頭
通な方々は頭を取り合います。
脳が美味。

鮒寿しは、お寿司の原点と言われる『なれずし』系です。
(ちなみに、そうでないという説も諸説あります。)
古代より湖国近江に伝わる発酵食品で、
子持ちの二ゴロ鮒を塩漬けにした後、
近江米で漬け込み、家伝の製法で1年以上の歳月を経て出来上がります。

hunaIMG_5357.jpg
近江高島の美しい風土の中にある、喜多品老舗さんの木桶蔵のある
『大溝地区の水辺景観』が日本遺産に指定されました。
豊かな水と自然の中で、『鮒寿し』の発酵食文化は育まれております。

hunaIMG_5358.jpg
2016年7月別日、
以前よりお世話になっておりました
喜多品(きたしな)十八代目
北村真理子さんにお会いしてフナズシのお話を伺ってきました。

hunaIMG_5359.jpg
世界ふしぎ発見の郷土寿司関連での出演の際には、
わざわざ、滋賀から東京まで鮒寿しをお持ちくださいました。
鮒寿しの伝統を残すための使命感溢れる喜多品老舗さんです。
ちなみに真理子さんは、
離乳食にも飯(いい)を入れて食べさせていただいていたと言います。
醗酵ごはんを乳児から。
肌がお綺麗な方は、菌友が多い説。
確信がかたまってきます。

hunaIMG_5369.jpg

hunaIMG_5362.jpg
到着してすぐにお出しいただいた鮒寿し2種。
左が赤米漬けバージョン(オス)
飯漬け(いいづけ)して柔らかくなってからお腹の部分に赤米を詰めたもの。
梅に似た酸味を感じます。

右が酒粕漬けバージョン(甘子漬けとも呼ばれています。)
飯漬け(いいづけ)してから、酒粕漬けで20日が通常のところを
その粕漬けを3回も漬け変えるという大変手間のかかった一品。
鮒寿しの概念が変わる美味しさで、
初心者の方は、この甘子漬けから入るのがオススメです。

hunaIMG_5363.jpg

hunaIMG_5365.jpg

hunaIMG_5366.jpg

hunaIMG_5367.jpg

hunaIMG_5368.jpg

hunaIMG_5370.jpg

hunaIMG_5371.jpg

喜多品(きたしな)さんでは、
現代では稀になった木桶仕込みで
自然の営みに任せた鮒寿しづくりを今も尚、続けられております。
3年仕込みを基本とし、ふなずし職人の経験と江戸時代より蔵に棲みつく
良質の乳酸菌が育み、じっくりと熟成させることで
美味しい鮒寿しが生まれます。
独特の香りに酸味と旨味のある味わいは、
お酒の肴やお茶漬けに好まれています。
琵琶湖周辺では、
ハレの日のおもてなし料理や自然の滋養食としても珍重されております。

寿司職人 岡田聖也の名言があります。
『なれずしを臭い臭いと言うでない。この臭いに慣れたとき、本当のなれずしの旨さがわかるものだ。』と。
慣れと熟れをかけた、オヤジギャグである。


funaIMG_3960.jpg

funaIMG_3961.jpg

琵琶湖の【にごろ鮒】と上質の近江米【高島産コシヒカリ】、【白扇酒造・三年熟成本みりん】。
原材料を厳選し、手間ひまをかけてじっくりと3年熟成させた鮒寿しです。
まろやかさ、爽やかさの増す、滋味深い美味。
そのままお酒の肴に、とろろ昆布と合わせて鮒寿しのお茶漬けに。

funaIMG_3962.jpg

funaIMG_3963.jpg

funaIMG_3964.jpg

funaIMG_3965.jpg

funaIMG_3966.jpg

funaIMG_3967.jpg

funaIMG_3968.jpg

funaIMG_3969.jpg

funaIMG_3970.jpg

funaIMG_3972.jpg


sushiIMG_6884.jpg
四◯◯年鮒寿し 飯漬 姿 鮒寿し
米(滋賀県高島市産)、二ゴロ鮒(琵琶湖産)、塩、味醂、でん粉使用。
鮒が丸ごと一尾、この飯の中に包まれています。

喜多品さんには
通常の鮒寿し以外にも食べやすく考えられた鮒寿しもございます。

sushiIMG_6880.jpg
四◯◯年鮒寿し 和ごはん(ゆず入り)
鮒寿し
滋賀県高島市産のお米、琵琶湖産の二ゴロ鮒に
ゆず、塩、砂糖、味醂、でん粉で作られた
ゆずが香る食べやすいふなずし。


IMG_6889.jpg
四◯◯年鮒寿し 甘露漬 姿 鮒寿し
酒粕、二ゴロ鮒(琵琶湖産)、味醂、粕、砂糖、塩、でん粉が原材料。
鮒ズシをさらに粕漬けにすることで、味の奥行きが深く、
甘めの鮒ズシになっています。

sushiIMG_6887.jpg
甘露漬がスライスされた状態の鮒寿しもあります。

sushiIMG_6882.jpg
甘露漬 切り落とし鮒寿しも。

【鮒寿し】のお召し上がり方
・鮒についているご飯粒、酒粕(甘露漬)は
洗わずに包丁の背でよく取り除き、
3,4ミリ位の薄さに切り、そのまま。
お好みで生姜醤油やわさび醤油など。

パーツ別 ふなずしの甘露漬け
funaIMG_8533.jpg

funaIMG_8534.jpg

funaIMG_8535.jpg

funaIMG_8537.jpg

・お茶碗に頭・尾などを2,3切れ
少量の塩を加え、
熱湯、昆布出汁、煎茶を注ぎ
お好みの調味料を入れていただく。

・保存の場合は漬け粕で包み、ラップなどで密封し
冷蔵庫にいれておけば風味が保てます。


製造者 総本家 喜多品老舗 北村真里子さん
    滋賀県高島市勝野1287

全国発送していただけますので、
ぜひ喜多品さんのホームページからご注文を!

みんなで食べて、寿司の歴史を繋げましょう!

hunahunaIMG_1002.jpg
フナズシは頭、特に脳の部分がジュワッと脂が出てきて美味しいですよ。

【にごろぶな・ニゴロブナ・似五郎鮒】についてはこちらからどうぞ。
http://www.sumeshiya.com/blog/2016/07/post-1556.html