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2015.07.18

三洲三河みりん 角谷文治郎商店(愛知県 碧南市)

[酒蔵訪問]

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『愛知県 醸造の旅』と題して向かった 2015年春

醸造王国 愛知県
三洲三河みりんの『角谷文治郎商店』の長女、角谷文子さんのお導きにより、
贅沢にも醸造三昧な2日間となった。

・碧南市の日東醸造さんの『しろたまり』の仕込蔵を見に、足助(あすけ)まで
・岡崎市の『まるや八丁味噌』さんにて商談
・刈谷市で、醸造では無いが発酵の『クラタペッパー』の倉田さんと落ち合い、飲み。
・常滑市で日本酒『白老』を作る『澤田酒造』さんの蔵見学に。
・知多郡 武豊町の醤油蔵『南藏』さんにてたまり醤油と豆味噌の見学。
・そして今回の本命。愛知県 碧南市『三洲三河みりん 角谷文治郎商店』さん

みりんについて実際に現場で学びたかった自分にとって
本当に貴重な時間となりました。

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このページには、
みりんに関する豆知識や得た情報を常に更新して掲載していこうと思います。

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『米一升、みりん一升』。

まずはこの言葉からいきなり衝撃を受けます。

本格みりんは、
同じ米から同じ量のみりんが造られるということ。
醸造用糖類や醸造用アルコールを加えて数倍に増量させたものとは
比べ物にならないほどの米の旨みをたっぷりと感じるわけです。

ちなみに、みりんを仕込むお米は『もち米』を使用します。

500年ほど前から甘いお酒として醸造されて飲み親しまれてきたみりん。
今うちで板前修行中の十代の彼に、早くこの旨みの液体を味見させてあげたいものです。
でも、
お酒は二十歳になってからね!

2,3ヶ月で造られる製品や、海外の安価なお米で仕込み、半製品を輸入して
さらに2次加工されるのが一般的な本みりん。
しかし、
三洲三河みりんは2年もの年月をかけてじっくり造られます。

社長自らが良質なもち米を求めて
全国の生産者さん(主に山形県、宮城県)を訪ね、原料のもち米を厳選したあと
自社で精米ををし、
米麹をつくり、
蒸したもち米と
さらにみりんの仕込みに必要な焼酎も自社の蔵(港本町)で仕込んでいます。
無味無臭のアルコールを使うところもある中、
みりん原料に適した香り豊かな本格焼酎(酒粕を蒸留した粕取り焼酎)まで造っておられます。
寿司屋が魚を仕込むために、まずは包丁を造るところからやるようなものです。
頭が下がります。

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そして、加熱殺菌処理をせず
生詰めにすることで、瓶の中で米麹がゆっくり働き
瓶詰め後も、もち米の美味しさがさらに引き出されていくそうです。

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みりんの効果って?

《照り、つやを出す》
加熱調理のお料理などでは、
醸造によって出来る糖分と旨み成分が加熱され結合し
料理に照りとツヤを出します。

《こく・うまみを引き出す》
アルコール分の働きかけで素材の中までしっかりと味を浸透させるため
旨みが溶け出すのを防ぎます。なので素材のうまみが活きてくる。
めんつゆ、煮物、含め煮、酢の物等
みりんを入れることで、複雑な旨み成分がコクをだし、味をよくします。
おいしさを包み込んで長持ちさせるのもみりんの特徴です。

《まろやかな甘味》
砂糖類では表現できない、みりん特有の
何種類もの甘味と旨みの成分が
料理の味に深みをもたらしてくれます。

《臭みを消す》
みりんの香り成分やアルコールが、
魚、肉の生臭さを消してくれます。
みりんを加熱することでアルコール臭はとび、
香りと味を整えてくれます。

《煮くずれ防止》
アルコールが素材の中に味を浸透させる働きかけをし、
身を引き締めて、煮くずれが起こるのを防いでくれます。

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【酢飯屋・suido cafe】で使用している味醂はこちら。


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《有機三洲味醂-ゆうきさんしゅうみりん-》

自然な栽培方法で、昔ながらの蔵の中で、季節の移り行くままに
素材の持ち味を大切に醸してあります。

原料は 『有機もち米』・『有機米こうじ』・『有機米焼酎』だけ。

すべての原料米が自然環境の循環を考慮した有機農法で栽培されています。

そして、200余年伝承されてきた技で
蒸したもち米と米こうじを焼酎と一緒に仕込み、
長期間の醸造熟成を経てみりんとなります。
『もち米』の美味しさを『醸造』という技のみで引き出したのが『みりん・ミリン・味醂』です。
『醸造』は、人の力の及ばない微生物の働きです。

みりんは、砂糖よりも奥行きのある甘さを持つ旨み調味料で、隠し味の効果があります。

※冬の寒い時期、瓶の底に白く結晶することがあるあれは、
もち米の糖分が固まったもので、ハチミツ同様に温めると元通りになります。

アルコール分は13.5%
エキス分43度以上


ちなみに
《有機栽培とは》
生きている土の中には、枯葉や落葉を分解する微生物と、
その一部を合成する微生物があり、植物に必要な栄養分を作り出しています。
微生物による分解と合成。
この終わることのない営みを生態系といい、これがバランス良く行われていれば、
作物は、化学肥料なしで健康に成育していきます。
逆に、農薬や化学肥料を使い続けると
生態系のバランスが崩れて、土は死んでしまいます。
死んだ土からは、健康的な美味しい作物は育ちません。
化学肥料や農薬を使わず、自然の営みの中で作物を育てる。
これが有機栽培です。


《有機みりん粕》

本みりんのしぼり粕は
真っ白でぼろぼろとした形状が、満開になった梅の花のように見えることから
別名『こぼれ梅』とも呼ばれます。

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江戸時代中期の書物『和漢三才図会』に書かれている通り、
みりん粕は古くから『甘いお菓子』として食べられていたそうです。
お米の自然な甘さと柔らかな香りは、
そのまま食べても、お菓子やお料理にも美味しく変身します。

角谷文治郎商店さんのホームページにて
みりん粕レシピも公開されております。
http://www.mikawamirin.com/
※若干のアルコールが含まれているため、その点はご注意を。
※時間の経過とともに変色することがありますが、これは熟成が進んだのであって劣化ではありません。

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写真はみりん粕で作られた甘酒。
甘さに癒されながらも即、体に元気スイッチが入ります。

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《三河二段仕込み 三洲梅酒》

本格焼酎に、もち米、米こうじを仕込み
時間をかけて、もち米の甘さを十分に引き出します。
そこへ青梅を仕込み、さらに長期熟成させることで
まろやかな味わいが生まれます。
砂糖は無添加。
お米の自然な甘さだけを生かす独自の新製法で作られています。

左が【三洲梅酒(辛口タイプ)】
リキュール
アルコール分14%
原材料は青梅、もち米、米こうじ、焼酎

焼酎の仕込みの配合を多くして、
甘さを控えめにし、軽快な香気を残した
砂糖無添加の二段仕込み辛口梅酒


右が【三洲梅酒10(濃醇すっきり甘口タイプ)】
リキュール
アルコール分 10%
原材料は青梅、もち米、米こうじ、焼酎

焼酎にもち米、米こうじを仕込み、
米の甘さ、旨みを十分に引き出したあと、
青梅を仕込み、十分熟成されて出来る
砂糖無添加の二段仕込み梅酒


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角谷文治郎商店 三代目 角谷利夫社長と会食後の一枚。
貴重なお話を沢山ありがとうございました。
大変勉強になりましたと同時に、
さらに三洲三河みりんが大好きになりました。
今後とも末永いお付合いをどうぞよろしくお願いいたします。

《社長のお言葉》
・『みりんはあくまでも脇役。でも名脇役で、良いみりんは料理の味を十分に引き立てます。』
・『みりんは元来が酒ですから、原料のもち米に始まって麹づくり、搾り、そして熟成が大事です。
それが調和してこそ、料理に膨らみのある甘味とキレ、照りを生み出すみりんになる。』

明治43年創業
【株式会社角谷文治郎商店】さん
〒447-0843
愛知県碧南市西浜町6-3
TEL 0566-41-0748
ホームページ http://www.mikawamirin.com
Facebookページ https://www.facebook.com/mikawamirin

【みりんの歴史など】
愛知県南部の三河地方は、
醸造に適した豊富な良い水(主に西三河平野を流れ、三河湾に注ぎ込む矢作川の伏流水)と、温暖な気候に恵まれて
豊かな穀倉地帯だった。
そこに醸造の専門家である杜氏さんが加わった。
200余年の昔から知多半島および周辺の清酒醸造が盛んに行われてきた理由だ。
それは江戸時代の灘に匹敵するほどだったそうです。
愛知の醸造調味料の歴史をさかのぼっていくと、酒造りに行き当たる。
どの国、どの地域でも酒造りは醸造文化の精華である。
愛知は、
『米』、『水』、『人』が揃っていた。
当時は各地の醸造家が、最先端の技術を学びに三河を訪ねていたようです。
その高度な醸造技術と、酒造りの副産物としての酒粕。
この二つがあったからこそ
碧南の『みりん』、半田の『酒粕酢』も、
かつて盛んだった酒造りの基盤の上に育まれてきたわけです。
三河平野では米、麦、大豆が豊富に穫れ、それらの製品を船で出荷するための港があったことが
発展してきた理由であり
今日でも、全国で一番業者数の多い、みりんの本場となっています。

『みりん』は『甘味滋養飲料』として醸造され
『調味料』として製造方法に改良が重ねられてきた。

《みりんの変遷》
みりんが日本に誕生したのは、戦国時代のころ。
それまでは既に行われていた酒の中に「もち米」をさらに仕込み、
甘くて濃い「さけ」を造る方法から、焼酎の製法を取り入れ、
焼酎の中に「もち米」と「米こうじ」を仕込み、
以前にも増して「甘く濃い酒」を造る新しい技術に発展していった。
古書には「密淋酒」、「美淋酒」とかかれており、
現在と比較するとそれはほんのり淡い甘口のお酒で、
高級な酒として引用されていたようです。
みりんは、「焼酎」の中に「もち米」、「米こうじ」を仕込む、
酒造りとは別個の独立した製法であります。
焼酎原料には清酒粕や米を使い、かけ米にもち米を使うという違いはあるが、
精米、蒸し、麹作り、搾りとほとんど同じ道具を使うので、
清酒造りの傍ら兼業でみりんを造る蔵が多く、
明治時代には3,000に近い免許場があったそうです。
甘口の高級なお酒のみりんが、調味料として使われたのは古く、
みりんの出現後まもなく使われだしました。
当時の目的は、砂糖よりも入手しやすい甘味料として用いられたようです。
甘味飲料として製法が確立したみりんは、江戸時代になってさらに発展を遂げ、
焼酎歩合の少ない「本みりん」、多い「本直し」と分けて造られる様になり、
明治、大正の時代には、社会が安定し、
下戸や女性に好まれる甘い滋養飲料や割烹調味料として消費が増え、
よりコクのあるノビのきくみりんの必要性が高まりました。
そして、今日のエキス分50にちかい濃厚なみりんが造られる様になったのは、
大正末期から昭和初期にかけてでした。
戦前の良き時代に「米一升、みりん一升」の仕込み方法も、
戦中、戦後の米不足の世相の中では許されず、
昭和18年から8年間は製造が禁止されました。
その後、再開出来たものの、米の不足や食糧事情は厳しく、
一部の高級割烹やうなぎやさん等のみで使われるみりんは
「ぜいたくひん」として大変高い酒税が課せられました。
ちなみに、昭和30年頃の1升びん1本売値1000円の内762円が酒税だったそうです。
この様な高い酒税負担から逃れる為に出現したのが
当時の「新みりん」、「塩みりん」。
前者は雑穀を原料に糖化した液に化学調味料、添加物を加えたもの、
後者は塩水中でアルコール発酵をさせた塩辛い清酒様の調味液を造り、
さらに甘みを加えたものです。
前者はアルコール分を含まない別名「煮切りみりん」と称し、
後者はアルコール分を含みながら塩分があるので、飲用にならないと、
「みりん」の3文字を使いながら酒税法の外で製造と販売が始まりました。
高負担の酒税のため、消費が限られ全国のみりん業者が免許の返上、転廃業が続出し、
昭和31年,34年,37年と3回にわたり大幅減税がなされて、121円まで下がりました。
それまでは高級調味料として一部業務用にしか使えなかったみりんも、
減税されて家庭用調味料に使われるようになり、
大正時代に10万石だった生産量が戦後、激減し、その後、昭和40年代始めに回復し、
以後安定した生産量の増大があり、60万石をこえるようになりました。
しかし、みりんの第一次成長期は政治的な米価引き上げの時期に重なり、
減税されて使い易くなった価格を上げることが出来ず、
糖類・アルコールの増量でつじつま合わせをし、消費拡大が優先されました。
国民全体が中流意識を持つようになった第2次成長期は、
大型スーパーが全国いたるところにでき、
それまで酒販店によって御用聞き販売されていた味噌・醤油等調味料が
御用聞き配達商品から、買い回り商品に変わり、
酒税免許のないスーパーでは調味料の品揃えの必要性から
「みりん」ではない「新みりん」・「塩みりん」が正しい商品情報がないまま並べられ、
急成長し、みりん業界、流通、消費者層のいたるところで混乱が生じ、
昭和50年に公正取引委員会より内容の伴わない名称表示であるとして、
排除命令が出され、今日の「みりん風調味料」になりました。
しかし、
スーパーの売り上げ増大とともに増え続け「みりん」を遥かに越える生産量になっているようです。
平成5年の米の大凶作は、消費者の米の関心を一気に高めましたが、
みりん原料のもち米は平成3年から不足状態になり、
現物の入荷減と2倍を超える価格高騰になったにも関わらず、
みりん業界では全体の業界の問題とはならずに終わりました。
それは、海外の米が安く入手できる所で仕込み、
輸入されたもろみをみりんの代替原料として、使われたからです。
その結果、製造原価は大幅に下がり、国内の米の高騰にも関わらず、
米を原料としているみりんが価格破壊を標榜する大型店に並ぶようになりました。
甘味滋養飲料として製法の確立したみりんが、製造技術の積み重ねにより、
調味料として素材の持ち味を引き立てる、なくてはならない重要な存在になりました。
しかし、みりんについての情報、知識はそれほどお持ちでしょうか。
使い方の分かるようなクッキングノートはたうさんありますが、
みりんを使いこなして更に楽しい食生活をすすめるためには、
3倍4倍に増量された「本みりん」や「みりん風調味料」にはない
「みりん」の良さのわかる高品質のみりんを歴史、製法等の情報と共につかうことではないでしょうか?
もち米のおいしさを「醸造」というのは、
昔からその土地の気候風土のなかで育まれるものです。
灘・伏見のお酒、野田・銚子の醤油のように日本の醸造食品はそれぞれ本場があるのです。角谷文治郎商店は醸造業の盛んな愛知県のなかでも200有余年続いたみりんの本場・三河で原料焼酎の仕込みから本格みりんを造る唯一のみりん専業の店です。
(文・角谷文治郎商店さまより)