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はくせんしおまねき・ハクセンシオマネキ・白扇潮招き・Uca lactea

[海の生き物]

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スナガニ科シオマネキ属
ハクセンシオマネキ、日本最大の生息地は
熊本県 天草市の永浦干潟(ながうらひがた)。
大阪府の男里川河口にも多く生息しているようです。

オスの片手だけ、
自分の体からはみ出すほどの巨大なハサミ(鋏脚 きょうきゃく)を持つのが特徴的。

白い扇を振って潮を招いているように見えることから
そう呼ばれている。

ポルトガル語では『シエママレ』と呼び、
同じく潮を招くという意味。
中国では、大きなハサミを武器を抱えた姿に見立てて『擁剣』と呼ぶ。
英語では『バイオリン弾き』と呼ばれる。
フィリピン中部のビサヤ諸島では『アゴコエ』と呼ぶ。
さらに、『アゴコエのようにご飯を食べてはいけません!』と
要するに、左右両手で物をつかんで口に運ぶのは行儀が悪いという意味を込めて親が子供をたしなめる言葉があります。
ちなみにシオマネキの場合、両手で食べるのはメスのみです。


ちなみにオスの小さい方のハサミは
砂の中の微生物などを捕まえ食事をするのに使う。
メスは左右両方のハサミを使って砂や泥ごとつまみとり口に運ぶ。

飛び出している目の視界は、360度!!
甲羅の幅は2cm以下くらい。

警戒心が強いのと、すぐにその目に気付かれてしまうので、
観察するときのポイントは
とにかく動かないでじっとしていること。

オスメスの見分け方は簡単で、
メスは両方のハサミが小さいのに対して
オスは片方のハサミが巨大。
右のハサミが大きいオスと左のハサミが大きいオスの割合は半々。
(ヒメシオマネキ類はほとんどの割合で右手が大きくなる。)
稀に左右とも大ハサミの形態を残したまま成長したシオマネキの類もいる。
通常の個体で、大ハサミの重量はシオマネキの体重の20〜38%を占める。
人間の腕一本は体重の8%程度なので、
いかに重い腕を上げ下げしているかがわかる。

大きなハサミは数回の脱皮を経て再生するので
けんかや脱皮の失敗で失われても致命傷とはならない。
幼体の時期に片方のハサミが脱落し、その後脱皮する。
脱皮の際にいったん脱落したほうのハサミが再生する時に大型化する。
左右差の萌芽がいったんできてしまえば、あとは成長に応じて左右の差が拡大するという成り行き。

一日に2回、潮が引いた時に巣穴から現れる。

オスもメスも自分の巣穴をもって一人暮らししている。

穴の直径は1cmほど。
天敵となる他の生き物は入ってこれない。
巣穴、20cmほど中まで入ると少し広い部屋がある。
鳥などのくちばしが届かないくらいの絶妙な深さに
安全な場所を確保している。

オスは巣穴から半径30cmほどの縄張りをそれぞれ持っていて、
縄張りに入るとハサミを縦に振るわせて威嚇し合う。
甲殻の騎士シオマネキ!
この縄張りはメスをめぐる恋の舞台になる。

ちなみに、
波などで巣穴が埋もれ、巣穴を失ったオス(放浪オス)は、
人の縄張りを奪おうと争いを続ける。
巨大なハサミを持つオスほど強い。

潮が満ちてきたら天敵となるスズキやエイなどに食べられてしまうため
巣穴に入り、自分で砂で蓋をする。巣穴に入ってからも内側から砂や土で内蓋をして水が入ってくるのを防ぐ。

7月中旬、恋の季節の最盛期。
オスがハサミを高く振り上げてメスにアピール。
メスもこの時期は巣穴から離れて出歩き始める。
オスの狙いはカップルになるため、メスに巣穴に入ってもらうこと。
メスが近寄ってくるとさらに激しくハサミを振り回して、
まず、自分が先に巣穴に入って、
メスが入ってくれるかどうかを待つというスタイル。
メスは、オスが先に入った巣穴の中の近くで耳をすませて
オスが出す音を聞いて中に入るかどうかを決める。
『グワッ、グワッ、』と泣いて求愛、誘引するオス。
一定の時間の中で、短い間隔でより音を多く出すオスは
それだけ体力があるオスだと判断して、
メスはその巣穴に入っていく。
巣穴の中で、オスとメスがLOVEる。

ちなみに喧嘩などで大きなハサミを失ってしまったオスは
メスと間違えられて、他のオスから招かれてします。
巣穴を失ってウロウロしている放浪オスは
巣穴が欲しいので、メスに間違えられたのを幸い、招かれた穴に入ってしまうと、しばらくして叩き出される。

この時期は、
逃げ遅れて干潟に残ってしまった魚やエイなどにも襲いかかるほどの
肉食性の強いカニ、
【アシハラガニ】や【ヒメアシハラガニ】も天敵となる。
ハクセンシオマネキのメスは良く狙われてしまう。
オスは、大きなハサミで出来る限りの抵抗をする。

8月
巣穴にはお腹に卵を持ったメスが一匹だけ。
水中で卵に付くゴミをとったり、卵を動かして空気を送ったりして
マメに世話をしている。

卵から産まれて1週間。
引き潮の海水にのって、赤ちゃんは海に出る。
そして、しばらくは海に漂って過ごす。

2ヶ月で再び干潟に戻ってきて
甲羅5mmほどのサイズの子供に成長すると
オスはいっちょまえにハサミを振っている。
1年後の夏には大人になり、恋のバトルがまた始まる。

江戸時代に書かれた書物
『紀伊国名所図会』(和歌山県立博物館 蔵)に
ハクセンシオマネキの記述がある。

『小蟹(コガニ)にして色白く 片爪いたって大きく 足の音すれば穴に入るなり』とまさにハクセンシオマネキのこと。

昔は和歌山など、西日本の干潟には当たり前にいたシオマネキも
昭和30年くらいから、護岸工事などで干潟が失われて
ハクセンシオマネキは激減してしまいました。

そして、2006年
【シオマネキ】と【ハクセンシオマネキ】は
絶滅危惧種に指定されてしまった。

また来シーズン会いに行きます。