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岩手県宮古市「菱屋酒造店」

[酒蔵訪問]

2011年3月11日の東日本大震災から、早くも3年が過ぎようとしています。
都内では活気が戻り、あの震災を思い出させる痕跡は街中ではほぼ見かけることはありません。

しかしながら、太平洋沿岸に位置し、津波で400名以上の尊い命を失った岩手県宮古市の沿岸部の
景色を見渡すと、いかにあの日からこの地域の皆さんの生活が変わってしまったのか、
ということが分かります。

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太平洋に繋がる宮古湾からたった200mしか離れていない、この地帯。
もともとは住宅や店舗がならんでいたこの場所は、3年が経とうとする今でなお、空き地ばかりが目立ちます。
元々この地に住んでいた方々が、まだ自分の家に戻れていないという現実がここにあります。

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そんな中に、「千両男山」で地元から愛される菱屋酒造さんの建物が少し寂しそうに、でも堂々とした姿で建っています。
菱屋酒造さんは、ここ宮古市で唯一の酒蔵さん。

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蔵の中を、専務・斉藤鉄郎さんが案内してくださいました。

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あの日、菱屋酒造さんでは仕込みの真っ最中。
突然の津波で建物1階の壁はぶち抜かれ酒造りの為に大切に造っていた設備も、
敷地内にあった社長さんのご自宅も、すべてが波に飲みこまれました。

従業員は皆津波から逃れたものの、専務さんの奥様の妹さんが、蔵の中で亡くなったそうです。

そんな苦境の中、震災直後に従業員が一丸となり骨組みだけになった建物に、壁を作り直し
津波が去った後に泥だらけのタンクや圧搾機を綺麗に掃除して使い直し、震災前とまったく
同じ場所で震災が起きた2011年のうちにお酒作りを再開。

泥だらけだった圧搾機も、今では復活して元気に菱屋さんのお酒を造りだしています。

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こちらは貯蔵タンク。
津波が襲った後、もともと蔵に10基以上あったうち、ひとつのタンクだけが、水位が上がった天井の
端っこにひっかかり、ぷかぷかと浮いて生き延びていたそう。

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蓋が密閉されていたため、タンクの中のお酒も奇跡的に無事。
同じ岩手県内の別の酒蔵さんの設備を借りてこのタンクのお酒を搾り、商品として世に送り出しました。

今ではまた10基以上のタンクの中で、静かに今年のお酒が造られています。

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一通りの見学を終え、試飲タイム。
斉藤専務の奥様に注いでいただいたしぼりたてのお酒を酢飯屋酒担当・豊田と、今回ご一緒させて
いただいた販路開拓サポート・山崎さんが遠慮なくいただきます・・・

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ここで、杜氏の辻村勝俊さんが登場されました。
辻村さんは2004年より菱屋さんの杜氏をされていますが、以前は青森県西田酒造店で杜氏を
務められており、そちらの代表銘柄「田酒」を一躍有名にした名杜氏さん!

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辻村杜氏。後ろにいらっしゃるのは斉藤専務の奥様。

「とにかく、お米そのものの味を大切にして造ってるんです」と、胸を張っておっしゃる通り、
いただいたお酒は、柔らか〜いお米の旨味がやわらか〜く舌を包みこんでくれる、
本当に優しくて綺麗なお味。

純米酒の名人と呼ばれる辻村杜氏は、ニコニコしながらお酒作りのお話をしてくださる
素敵な方でした!

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あの日のことも、ひょうひょうとお話くださる専務さんや杜氏さん。
穏やな皆さんの表情。でもその表情の裏には、美味しいお酒を造り復活を遂げる、そう信じ続けて
きた情熱が存在するのでしょう。

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菱屋酒造の皆様、貴重なお話をありがとうございました。

また、今回酒蔵訪問・取材にご協力くださいました
宮古市産業振興部の山崎様、竹花様、販路開拓サポートの小地沢様、山崎様、
ありがとうございました!

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なお、試飲させていただいた菱屋酒造さんのしぼりたて純米吟醸の生酒は、もちろん酒蔵さん
直送にて酢飯屋に取り揃えておりますよッ!

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2月の酢飯屋の月替わりメニューにてお飲みいただけます!

酢飯屋にお立ち寄りの際は是非お試しくださいませ!!!

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[今回訪問した蔵元]
株式会社 菱屋酒造店
岩手県宮古市鍬ヶ崎下町5-24
TEL.0193-62-3128
http://homepage3.nifty.com/hisiya/

訪問日:2014年1月28日