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すしのだし!? 『酢にごし』 と『 酢ころし』について

[寿司海の生き物]

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魚の姿寿司、巻き寿司、押し寿司、などなど
高知県に伝わる寿司を『土佐寿司(とさずし)』と呼びます。
酢飯を美味しくするために出汁(だし)を使うのですが、
その出汁は、かつお節でも昆布でもなく、
【酢にごし】【酢ころし】という魚の出汁なんです。
その魚の基本となる魚種は
土佐湾で一年中豊富に獲れる『マサバゴマサバ』です。

まず、【酢にごし】とは、主に高知県の東部や山間部の一部の食文化です。
米や酢に魚の風味をつけて、身自体は酢飯に入れない方法です。
1 寿司用の飯を炊く時に、米の上にサバの切り身を置いて炊きます。
2 炊けたらサバを取り出し、身をほぐします。
3 酢を加えて少し置き、サバの身を漉します。
4 サバの旨味が移って少し濁った酢を使って酢飯を作ります。

魚を酢に浸すと、魚の無機質や水溶性タンパク質、いわゆる旨味が酢に落ちます。
さらに酸のpHが上がり、酢がまろやかになり、酢飯や酢のものにちょうどいい塩梅になります。

ちなみに、魚は塩で身がすわる。
どういうことかと言うと、
魚は生の新鮮なうちに、すっと捌いて塩をすること。
魚のタンパク質と塩が化学結合して、身がコリッコリになる。
その現象を『すわり』と言うがよ。
魚が古くなってから塩をすると、塩の通りは早けどパッサパサよ。
と松﨑淳子先生はおっしゃっておりました。

次に【酢ころし】とは、主に高知県の西部や海岸部の食文化です。
酢に魚の身をほぐして浸し、身を酢飯に混ぜ込みます。
1 サバの身を濡れた新聞紙で包んで蒸し焼きにする。
2 身をほぐして、酢に浸す。
3 そのまま酢と酢に浸したサバを飯に混ぜ込んで酢飯にします。

他にも、高知県内それぞれの地域に『すしのだし』があります。
・メヂカ
宗田節の材料となるメヂカ(ソウダガツオ)。水揚げの多い土佐清水市では、
メヂカの茹で節を酢に浸した『酢ころし』を飯に混ぜ込みます。

・そぼろ
ウルメイワシアジカマスブリハガツオなど様々な魚の身を
焼いたり煮たり炒ったりして、酢飯に混ぜ込む。

・いり汁
ジャコがたくさん獲れる地域では、ジャコを茹でたあとの『いり汁』が出回ります。
醤油に混ぜてだし醤油にしたり、すし酢に使うこともあります。

・ジャコ
イリコやチリメンジャコを刻んで酢に浸して、飯に混ぜ込みます。
馬路村(うまじむら)ではモミコミ、安芸市別役(あきしべっちゃく)ではスジャコ(酢雑魚)と呼ばれています。

【とさずしの酢飯(基本レシピ)】
〈材料〉
米1升
酢1合
塩30g
砂糖100〜200g
刻みショウガ
煎りゴマ

酢は穀物酢にゆの酢など、酢みかんの汁を混ぜて使う。
そして、酢飯に旨味をつけるために『すしのだし』を入れる。
だしを効かせば昆布や薄焼き玉子で巻いた芯(具)の無い寿司もご馳走になるというわけです!
急な来客があった時、
『五目でもしますき、ゆっくりしてつかいませ(五目でも作るので、ゆっくりしてください。)』
と言って、五目寿司を作っておもてなし。
現代では、急なお客様がいらしてから
お寿司を準備するなんて、考えられませんが
高知では、すしは準備がなくとも、にわかにできるご馳走と言う位置付けだったそうです。

穀物酢や米酢などの醸造酢を一切使わず、
ユズやブシュカン、直七などの酢みかんの汁だけですしを作りこともできます。
酸がきつい分、砂糖を多めに入れてバランスをとります。
新しい酢は、魚を漬けるがに使うて(漬けるのに使って)、
それを漉した酢は酢飯に使うたらぼっちり(ちょうどいい)。
魚を酢に浸すのは30分程度にするき、
魚の表面には酢が効いて、身はまだ赤い。
時間とともにアミノ酸に分解して、うまみのあるすしになるがよ。

昔からサバは日常食の代表。
ぶつ切りにしたサバと季節の野菜を煮たお汁や、
サバとニンニク葉、豆腐などを醤油と砂糖で煮込んだ『煮食い』など。
新鮮なサバを塩漬けにして山村へ運んだら、谷川の水で塩抜きしてサバずしに。
昭和初期には『儲かりゃサバよ(さっぱり儲からない)』という言い回しもあったほどの
大衆魚です。