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鍛冶師 丸山敦史(まるやまあつし)・Atsushi Maruyama

[道具]

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田園調布生まれ、田園調布育ち。
友人の丸山敦史が青森で、素晴らしい鍛冶師になっています。
最初に会った時から、器用さ、生きるセンス、こだわりを
会話から感じ取れるような少年だった敦史が
刃物にその全てを注ぎ込んで刃物作りを楽しんでいます。
1年でここまで出来るようになるとは、正直想像超えてきました。

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今回、
そこそこ研ぎやすくて、サビづらい包丁が欲しいという友人(料理人でない)からのリクエストで
鋼材は、日立の安来鋼(やすきはがね)『銀三(ぎんさん)』で、
柳刃と出刃を右利き用で造っていただくことにしました。
(もちろん和包丁ですから片刃です。)

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このシャーリングと呼ばれる機械で金属板を指定のサイズに切り出します。
紙をハサミで切る原理と同じで、上下の刃の間に金属板を差し込んで、
上の刃に圧力を加えて油圧で切断します。
ステンレス系ではなく、鉄系の素材の場合は
熱してタガネで叩いて切断するので、ステンレス系特有の工程です。

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鋼面を上にしてセット。

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こんな感じに切り分けられて、

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写真左2本が柳刃包丁用
長方形のものがこれから包丁にしていくための鋼で
包丁型になっているものは『ガバリ』と言って
形状確認の道具、包丁の型になるものです。
フランス語の『gabarit』(実物大型取り工具)が語源です。
右2本が出刃包丁用です。

ここから熱く、赤く熱して叩いて伸ばしていきます。
鉄系と比べてステンレス鋼(クロムが11%以上入っている鋼)は硬いので温度域も高めでないとダメになるため叩いて伸ばす鍛冶屋さんは今は少ないと思います。
鉄系の場合、800度前後で叩いて伸ばして、800度くらいで水か油で焼入します。
この工程で時間をかけすぎると炭素が抜けすぎてしまい、
焼入性能が落ちてしまいます。
これに対して、
ステンレス系はだいたい900度を超えるくらいまで熱してから叩いて、
基本的には1050度くらいで油か空気で焼入します。
温度が低過ぎるとステンレス系は割れたり、ハンマーの方が負けてしまいます。逆に1050度を超えてしまうと焼きが入る為、上げ過ぎもだめです。
要するに焼入の温度と方法が素材によって違うということです。

60470837_442457256516978_6108338630520995840_n.jpgまずはこれを伸ばして包丁の形にしてきます。

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赤くなるまで熱して、

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最初のシャーリングより小さいシャーリングで端を少し落とします。

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残したところを潰して中子と言われる、柄の中に入る部分を
こんな感じで潰していきます。

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作業場の風景。

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中子を作った後、四角い鋼材を熱して包丁の形にしていきます。
最初に使うハンマーは、力が強くよく潰れます。
なので、表面が凸凹するので、
次は少し弱めのハンマーにて表面を均します。

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こんな感じになります。

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均しの作業場風景。

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伸ばした鋼材に包丁の型をのせ、チョークで線を引きます。

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こちらはグラインダー。

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線に沿ってグラインダーで形を整えます。

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この時点で、型(ガバリ)と同じ形になりました。

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ここで表面についた黒い皮膜を落とします。

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こちらが会社の刻印
三つ星一引きで二唐(にがら)。

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カンカンカンと打刻。

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しっかり刻印が入りました。

この後、焼入工程ですが、
片刃包丁はふつうに焼入すると鋼の収縮により曲がりが出てしまう為、
わざと逆に曲げておきます。
その後、焼きなましと言って、
鋼材に今までの作業でかかったストレスを癒してあげる作業をします。
焼入れ温度より少し低い温度に上げてから少しずつ冷ましてあげる作業です。
これをすることによって焼き割れを防げたり、
焼入れ性能があがるそうです。

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いよいよ焼入です。
1050度まで熱して、一気に油の中に入れて冷やします。

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この後、150度くらいに熱した油に15分くらいつけて焼き戻しをします。
焼入しただけだと固くなりすぎてしまい、割れやすくなってしまうので、
少しだけ柔らかく戻してあげる作業です。

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この後、荒い砥石で荒刃付けをします。

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この作業で大まかに、包丁のしのぎを立てます。

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片刃包丁の裏側に凹みを着ける作業。

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こんな感じに裏側に凹みをつけます。

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凹ませた部分を、丸くなっている砥石で研いでいきます。

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ここから砥石の目を細かくしてどんどん綺麗に研いていきます。

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ここまででこんな感じの裏になります。

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表はこんな感じです。

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ここからしのぎの幅を整えていきながら細かい砥石で綺麗にしていきます。

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どんどん研いていきます。

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少しでも傾きを間違えると、しのぎのラインが崩れてしまい最悪の場合作り直しになります。

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細かい砥石になればなるだけ滑りやすくなり、ミスをしやすくなるので集中して作業します。磨くのはこれで最後です。

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次はついに刃付けになります。

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まずは裏押しと言って、片刃の裏を平らに砥石にのせます。
この時、裏には凹みがある為包丁の周りの部分しか砥石に当たりません。
この当たっている部分の線が綺麗に出てない包丁はうまく研げてないということになります。

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かなり綺麗にできてますね。

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この後は、小刃をつけます。

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包丁作りの作業としては、ここまでです。

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新聞が綺麗に切れるようになるまで小刃付けと裏押しを繰り返します。

後は柄付けをして終わりになります。

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上が寿檀、下が紫檀の柄。

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白木の柄。

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黒檀の柄。(上が柳刃用、下が出刃用)

柄付けは、柄に元々空いている穴を焼きごてで焼いて広げます。
そこに包丁をトントン入れるのですが、それだけだと穴に水などが入り、
木が腐ってしまう為、こちらでは、接着剤と、木パテで穴埋めしています。

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柄付けが終わり、完成です。

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鋼を打つことを心から楽しんでいるのが、表情に出てます^^。

今後、津軽打刃物の後継者として、
すでにかなり期待出来る彼の作品。

気になる方は、料理人さんでも、そうでない方でも
鋼選び、サイズ、柄などすべてオーダーメイド可能ですので、
ご興味のある方、いつでもご連絡ください。
敦史にお願いして造っていただきます。
info@sumeshiya.com


こちらは、先日
敦史がくれた包丁。

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こちらの小さいナイフは、白紙2号本焼!
このサイズの本焼き。ユーモアを感じます。

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黒打ち銀紙3号

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