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子どもの本棚

[すし・sushi岡田イズム]

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【日本子どもの本研究会】さんの書評誌『子どもの本棚』に
『おすしやさんにいらっしゃい!』の舞台裏を寄稿させていただきました。

〈おすしは、すべて生きものからできている〉 おかだだいすけ

いつからか、世に蔓延りはじめた
『子供は魚が切り身で泳いでいると思っている』という大人たちの想像。
これまで実際に会ってきた子供たちから、
その言葉を聞いたことは一度もありません。
子供たちは小さな小さな頃から、
読み聞かせてもらった絵本に登場するおさかなをその目でしっかり見てきたし、
自我を持ち始めてからも自分で本棚から選び出したその海の本には、
切り身で泳ぐおさかななどは描かれておらず、
シャンとした姿で泳ぐおさかな、
可愛くて綺麗なおさかな、面白い顔をしているおさかな、
多々種類があるにせよ、
おさかなはこういうものだという認識は少なからず持って生きています。
大きな目、尖った歯、胃袋の中身。
獲物をねらって、それを噛んで、
何か食べた証拠をわかりやすく伝えるための手段として、
その鮮やかな真実の写真が最適でした。
魚は生きものだということ。
でも、お寿司は食べものだということ。
寿司職人の自分にとって、お寿司の本当のことを、
それは生きものの命だったということを、
子供たちに正直にわかりやすく写真で見せて伝えたい。
この本を執筆した動機はそこにあります。
海に釣りに出かけ、生きものとしてのおさかなを釣り上げる。
生きているうちは、生きものとして見ているのに、
おさかなが死ぬと、それが食べものに見えてくる。
おさかなだけでなく、お米や海苔、酢や醤油などの調味料、
植物として、菌類としての命もお寿司の中にあることについては
子供たちがもう少し大きくなってから気がついて欲しい裏テーマです。
『自分たち人間が食べるもので、生きていないものはなんでしょうか?』
これは、ぜひ子供達に質問してみてください。
正解は、水と塩。この二つだけです。
それ以外は、すべて生きものをいただいているということを押し付けではなく、
頭や心で自然に感じて、
優しく穏やかな気持ちを大切にできる大人になって欲しいという願いを込めました。
そしてもう一つ、僕がこの本を執筆した理由は、
おさかな離れ、お米離れという社会問題への注意喚起も含まれます。
お寿司の多くは、おさかなとお米で作られています。
ゆえに、お寿司離れとも考えられるわけですが
嬉しいことに、お寿司は多くの方にとって好きな食べ物の上位にくる食べものです。 
お寿司をより深く知っていただき、お寿司を食べる機会を増やしていただけることで、
この社会問題を少しでも解決していけるのならば、
絵本を読んだあとにお寿司を食べたくなるような美味しそうな写真も必要だと考えました。
子供たちが大好きなフレーズ『へい、おまち!』は、必ず組み込もうと思いましたし、
そのページに出てくるお寿司は、思わず手を伸ばしたくなってしまうように、
原寸大にこだわりました。

こどもたちへ
今日は何を食べたかな?
今日食べたものの中には、命があったかな?
わたしたちは、命をいただかなければ、生きていけません。
そして、わたしたちの体は、今日食べたもので動いています。
いただいた命を自分の体に取り入れて自分のパワーにしていくこと。
お米は何粒食べたかな?数えきれないね。
お米一粒一粒は種です。種は命の始まりです。
大きなお口で、たくさんの命をパクッといただいた私たちは
みんなの命の分まで強く生きるために、私たちの力になってくれます。
命をいただくと、自分の命が強くなるということをいつまでも忘れないでください。
『かわいそう』と思ってくれた優しい子、
『いただきます』と言って、ありがとうという気持ちをもって命をいただくことができたら、
あなたの命はきっともっと元気になると思います。
次にお寿司を食べる日はいつかな?
そして今日のごはんも大切に、おたのしみに。
せーの、『いただきます!』。