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ほたてがい・ホタテガイ・帆立貝・Mizuhopecten yessoensis

[すし・sushiレシピ・recipe海の生き物]

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動物界 Animalia
軟体動物門 Mollusca
二枚貝綱 Bivalvia
自層鰓類 Autolamellibranchiata
翼形亜綱 Pteriomorphia
イタヤガイ目 Pectinoida
イタヤガイ上科 Pectinoidea
イタヤガイ科 Pectinidae
Mizuhopecten 属 Mizuhopecten
ホタテガイ Mizuhopecten.yessoensis

通称、ホタテです。

開国を要求するために日本に来航したマシュー・ペリー率いる
アメリカ東インド艦隊(黒船)が
1854年に函館湾で採取したサンプルを、
J. Jay が1856年に発表し、学名を Mizuhopecten yessoensis と命名しました。

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岩手県大船渡市 恋し浜ホタテ

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岩手県釜石市 ヤマキイチ商店さんからの『泳ぐホタテ』

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ホタテお触りタイム

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ホタテガイの殻径は、20cmほどになる大きな二枚貝です。
貝殻はふくらみが強い殻と弱い殻とが合わさっていますが、
ふくらみが強い方が右殻です。
殻の中央には大きな閉殻筋(貝柱-断面円形の横紋筋とその傍らに断面三日月形の平滑筋)があります。

およそ80個の小さな眼点(眼)があり(画像を参照のこと)、明るさを感じることができる。


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外套膜(ヒモ)の周囲にある黒い点々がホタテの目(眼点)です。
その数なんと、60個〜200個!!
明るさを感じることができます。

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日本語では、標準和名「ホタテガイ」の元となっている帆立貝が古くから呼称としてあり、
これは、約10〜15cmぐらいの貝殻の一片を帆のように開いて立て、
帆掛舟(ほかけぶね)さながらに風を受けて海中あるいは海上を移動するという俗説に由来していて
『和漢三才図会』においても記載が見られます。
俗語的略称として、「貝」を省略した帆立(ほたて、ホタテ)の名でも呼ばれることも多いです。

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板屋貝や、殻の形からそれを扇に見立てた『海扇(うみおうぎ)』との雅称もあります。
また、武家・久保田佐竹氏(久保田藩は「秋田藩」とも言う)の家紋に似ていることから
『秋田貝(あきたがい)』とも呼ばれます。

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ホタテの肝臓(キモ)。
ピンクなので、メスのホタテですね。
奥に見える黒っぽい部位は『中腸腺(ウロ)』です。
堆肥などに加工されていましたが、
最終処分場に持ち込めないほどの重金属(主にカドミウム)や砒素を含有する例が発見されてからは、
堆肥としても使えず、産業廃棄物としても処分が難しい状況になっています。
焼却法による回収では重金属類が気化し外部に排出される為、
電気分解や化学処理によって重金属を回収する方法が開発されつつあります。

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ホタテの肝臓(キモ)。
白が、オスです。

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ホタテの色気が凄いです。

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中国語では、ホタテガイ類を扇に見立てて
『扇貝(簡体字:扇贝)/拼音: shànbèi(シャンベイ)』と言います。
ただし、Mizuhopecten yessoensis を特定する呼称は確認できないです。

英語では scallop (イタヤガイ類)の一種である Mizuhopecten yessoensis を
Japanese scallop と呼びます。
日本で「ホタテガイ(帆立貝)」と翻訳されることも多い scallop は
生物学的には「イタヤガイ類」(おおよそ、イタヤガイ科)であって、
その一種である「ホタテガイ」とは異なります。

フランス語では
キリスト教圏では英語で言うところの scallop (特にその一種であるイタヤガイ属)の貝殻は、
中世以来、聖ヤコブの象徴物とされており、
フランス語では「聖ヤコブの貝」を意味する
"coquille Saint-Jacques [仮名転写例:コキーユ・サンジャック]" の名で呼ばれています。
これは「ホタテガイ」とは異なります。

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セクシーホタテ

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男前ホタテ

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ホタテガイが生息に至適な海水温は
+5〜+19℃の冷水ですが、
−2〜+22℃の間なら生きていけます(稚貝はさらに4℃ほど高温でも耐えられます)。
浅海の砂底に生息し、自然分布域はロシアのカムチャツカ半島・千島列島・サハリン・沿海州、日本の北海道・東北地方、朝鮮半島北部などです。
日本での南限は日本海側が能登半島、太平洋側が千葉県とされていますが、
大規模な商業的漁業が可能なのは東北地方の三陸海岸以北です。

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中華人民共和国やアメリカ合衆国の一部でも養殖され、
乾物に加工されて流通していますが、
養殖場はいずれも日本以上に水温が高い海域であるため、
イタヤガイなど、別の種であると考えられています。

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天敵はヒトデ、オオカミウオ、ミズダコなどです。
ただし、ヒトデに襲われると閉殻筋で力強く殻を開閉させて海水を吹き出し、泳いで逃げることができます。

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北海道で最も多く漁獲され、代表的な漁業形態は、以下の2つです。
〈垂下式養殖〉
日本の北海道:サロマ湖、寿都湾、岩内湾、内浦湾、函館湾西部。東北地方:陸奥湾、三陸海岸

〈小型底びき網による漁獲〉
北海道:オホーツク海側・道東方面

小型底びき網漁には、区画漁業権に基づき、稚貝を海底にまいて育てる、
地撒き(じまき)養殖の物を捕る方法も併用されています。
小型底びき網による漁獲は、
地撒き養殖用の1年貝(稚貝)を放流後3〜4年、
自然成長する貝と、自然発生する4〜5年貝を併用して漁獲されるので『天然物』と称しています。
しかし、養殖用といっても人工飼料を与えているわけではなく、
あくまで外敵に襲われないように保護しているだけとも言えるので、
天然物と養殖物の境界線は区別をつけられません。

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【ホタテの養殖】は、天然稚貝を捕獲し育成する畜養で行われます。
5〜7月 - 0.25mm位 タマネギ袋や棒網を海中に沈めて種苗稚貝を付着させ採捕します。
9〜10月 - 1.0cm 位 中間育成1(細目ザブトン籠)
翌年 3〜4月 - 3〜5cm 中間育成2(荒目ザブトン籠)
養殖稚貝として出荷または自然海域に地撒き放流。
5月頃から - 本育成(耳吊り、丸籠)
出荷のための水揚げ。
懸垂養殖 - 2年後
地撒き放流 - 4年後

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2009年に、北海道の噴火湾周辺から三陸沿岸にかけて、
ザラボヤ、イガイ、フジツボなどが大量に発生し、
養殖ホタテの生育を阻害したり、
垂下式養殖のロープが切れるなどホタテ漁に深刻な影響を与えており問題となりました。

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食用として多く漁獲されていますが、養殖もされています。
うま味成分であるアミノ酸、グルタミン酸、コハク酸やタウリンなどが豊富に含まれています。
ホタテガイ特有の甘味はグリコーゲンによるものです。

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調理方法にもよりますが、
日本では生後一年程度の稚貝から、3〜4年ほどかけて大きくしたものまで、幅広く流通しています。
貝柱は肉厚で淡白ですがほぐれやすく、舌触りと風味がよいです。
刺身や煮込み、バター焼き、スープなど様々な料理で使用されます。
また、乾燥して干貝(干貝柱)にも加工し、一部は日本から輸出もされ、具材や調味料として利用されています。
ヒモ(貝ヒモ)と呼ばれる外套膜(がいとうまく)も生食したり、燻製や塩辛などにして食べられます。
貝殻以外はほとんどの部位が食べられますが、「ウロ」と呼ばれる中腸腺は
えぐみが強く一般には好まれない上、
生物濃縮により、貝毒や重金属(主にカドミウム)が集中しています。
正規の販路のホタテであればサンプル検査で基準値を超えた場合は流通差し止めとなりますが、
念のためには食べない方がよいです。
ウロは黒緑色で目立つため、素人でも手で容易に取り除くことができます。
取り除かずに調理すると内容液が料理全体に広がることが多いため、通常は調理前に取り除きます。

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代表的な加工品は冷凍貝柱、ボイルホタテ、干し貝柱です。
日本料理のほか、フランス料理や中華料理の食材として日本国内で消費されるだけでなく、
日本国外にも盛んに輸出されています。
乾燥品は中国での需要増により価格が生鮮品の数倍に跳ね上がることもあります。

冷凍貝柱は、一般に急速冷凍が可能なトンネルフリーザーを用いて冷凍します。
これは貝柱の変色や組織の劣化を防止するためで、刺身に供することも可能になっています。
ヒモと呼ばれる外套膜を付けているものもあります。

ボイルホタテは、ボイル品が冷凍形態で流通しています。
シチューの具などに用いられます。

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干貝は、貝柱のみを乾燥して製造します。
貝柱は水分が8割近くを占めるため、干貝は非常に収縮します。
日本国内では酒肴として供することが多いですが、
中華料理では水戻しや粉末状にしてスープや炒飯などの具材として用いられる高級食材です。
うま味成分に富むため、XO醤の材料としても使用され、高級オイスターソースに入れられる例もあります。

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貝柱は非常に硬いことから、軟らかく製造した半乾燥のソフト貝柱という製品もあります。
おやつや酒肴などにそのまま供されます。
一玉ずつ真空パックされているものが多いです。
調味は塩と燻油漬けなどがあります。
稚貝は、殖の初期段階で殻が割れるなどして商品価値の低い物が味噌汁用として市場に流通することが多いです。
いわゆる、殻付きのベビーホタテというやつです。

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ホタテの殻の片面をはずしたら、
ウロを持ち、ヒモと内臓を一気に引き取ります。

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まだ全てのホタテが活きています。
全て、この状態にしてから、今度は一気に貝柱を外していきます。

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たてじおで洗って、ペーパーで水気を拭き取っていきます。

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ホタテの海。

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ホタテの刺身盛り

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これがホタテのヒモ(外套膜 -がいとうまく- )です。

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ホタテのヒモ(外套膜 -がいとうまく- )掃除
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貝殻は日本などの料理店等で野趣を演出する鍋代わりに使用されることも多いです。
貝焼き味噌(ホタテガイの貝柱やヒモ、刻みネギ、削り節を味噌で煮て玉子で綴じる)は青森県の郷土料理です。
貝焼き味噌用に大型の貝殻も販売されており、刺身の盛りつけや、なかには灰皿などにされることもあります。

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秋田県の内陸の鉱山地域で生まれ育った作家、松田解子さん(1905-2004)は、
ホタテの貝殻で馬肉を煮て食べるのは当時(19世紀末から20世紀はじめにかけて)
下賎なものとして扱われていたと、小説『おりん口伝』ほかで書き残しています。

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貝殻はカキの垂下式養殖にも一般的に使われています。
カキの幼生が浮遊している時期に多数のホタテ貝殻を連ねたロープをイカダから海中に吊るすと
幼生が付着するため、これを海中で肥育させる養殖方法です。

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貝殻は、利用される量を上回る排出量なので、多くは埋め立てなどの方法で廃棄されます。
このため活用についての研究開発が行われています。
ホタテガイの殻は、カルシウムに富むことから、
学校で使うチョークやトラックラインを引く粉に加工されますが、
高価なことがネックとなり需要の拡大には至っていません。
粉砕して、主成分の炭酸カルシウムを精製し、酢酸を加えた酢酸カルシウムは
環境に全く影響を与えない融雪剤として注目されてはいますが、
コストが数倍になるため主要道路や国道などの一部道路に利用されるに留まっています。
青森県の八戸工業大学の研究により、
貝殻を粉末にして特殊な熱処理を施すと殺菌、消臭、除菌等の
様々な機能があることがわかってきており、幅広い応用が期待されています。
工業利用は、ホタテセラミックや、ホタテタイルなど粉砕したものを特殊な処理にて固めて
歩道のタイルなどに利用しています。
このタイルは水を通すので歩道が水浸しにならない優れた素材です。
粉砕した粉は石灰の代わりの土壌改良剤としても利用できます。
しかし、コストの面からまだまだ一般的な利用には至っていないのが現状です。
過去に、海に向かって練習ができるゴルフボールを貝殻の粉末から作製した企業もありましたが、
廃棄物処理法に抵触する恐れがあるとして製造を差し止められています。
近年では殻を土壌改良剤やセラミックやセメント等の工業原料として使用する技術が開発されつつあります。

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『スキャロップ・パール(scallop pearl)』と呼ばれる
天然の真珠を産することがあります。
アコヤガイなどのような真珠層ではなくカルサイトによる葉状構造が特徴です。
主にカリフォルニア沖などで採取されていますが、
養殖されているものではない天然の真珠のため非常に珍しく貴重で、ほとんど市場に出回らず、
市場に出回っている物も小さい物や形のいびつな物がほとんどです。
普通の食用のホタテの中に産するため、おやつや酒肴のホタテの中に入っている場合もあります。

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ヨーロッパではホタテガイ類(ヨーロッパホタテ[学名:Pecten maximus]を主とする近縁種群)は
豊穣の象徴として、ギリシア神話の女神ウェヌス(ヴィーナス)とともに描かれています。
サンドロ・ボッティチェッリの 『ヴィーナスの誕生』が有名ですね!

聖ヤコブの象徴としても知られ、この聖人の聖地である
サンティアゴ・デ・コンポステーラ(スペイン)へ向かう巡礼者たちは、
ホタテガイ類の貝殻を身に着ける風習を中世以来現代まで続けています。
フランスではヨーロッパ産のホタテガイ類を「聖ヤコブの貝 (coquille Saint-Jacques)」と呼びます。
カルロ・クリヴェッリ作 『聖ヤコブの肖像画』にも描かれています。

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ホタテの握り寿司
左:伝説黄金ホタテ 右:通常ホタテ

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ホタテの握り寿司 ひしおのせ

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こちらも、ホタテの握り寿司 ひしおのせ

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千葉県銚子市の『山十』さんのひしおとホタテの相性が抜群なんです。

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ホタテの握り寿司 ラブソースで

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ホタテの握り寿司 醤油こうじ生コショウのせ

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ホタテのみそ鍋

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ホタテハンバーグのレシピはこちらからどうぞ。


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ホタテの炊き込みご飯

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ホタテ寿司だらけの寿司ケータリング。

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2019年12月 クックパッド本社にて、
お子様向け『ホタテ教室』をしてきました。
当日の様子はこちらからどうぞ。
ホタテの先生をしてきました。@クックパッド