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まぼや・マボヤ・真海鞘・Ascidiacea Nielsen

[すし・sushi海の生き物]

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動物界 Animalia
脊索動物門 Chordata
尾索動物亜門 Urochordata
ホヤ綱 Ascidiacea
マボヤ Ascidiacea Nielsen

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ホヤの仲間は世界中に3000種以上、
浅い海から深い海まで暖かい海から冷たい海まで
あらゆる海の環境に適応しているすごい生きものです。

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ホヤは、人間が舌で感じる5つの味覚の基本要素、
【甘味(あまみ)・塩味(えんみ)・酸味(さんみ)・苦味(にがみ)・旨味(うまみ)】が
すべて揃った珍しい、贅沢な食材です。
ホヤを食べた後に香るあのホヤ香。
そこに追いかけるようにして
水やお酒など飲みものを口に含むと
味を変化させるという驚きの食材です。
ホヤに含まれるグリシンやアラニンというアミノ酸や
グリシン・ペダインという塩基が人の味覚に作用して
水がとても甘く感じます。
旬の夏には、甘みと旨みがさらに増します。

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写真のホヤは、
岩手県洋野町種市(いわてけん ひろのちょう たねいち)に伝わる
南部潜りで収穫された天然のホヤです。
水深30mの世界は光がほとんど届かず、体に相当な圧力がかかります。
潜水病のおそれもある中、海底で3時間。

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船で引き上げる養殖ホヤとは異なり、潜水という危険で手間のかかる作業が必要で
2018年7月現在では『南部潜り』で天然ホヤを獲る方は残り2名となっております。
磯崎元勝さん(兄)と司さん(弟)。
この地域に100年以上前から伝わるヘルメット式潜水技法、
それが『南部潜り』です。
ヘルメットは約17kg、専用の靴は片足約8kg,胸に14kg、背中の上部に13.5kgの鉛、
腰にも重りを装着すると、総重量は80kg近くになります。
天然ホヤ漁は
船長、南部もぐり、綱夫(命綱を扱う人)、ホヤを箱詰めする作業員の4人1組が基本です。
天然のホヤの最盛期は6月〜8月です。
8月頃が一番肉厚です。

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マボヤの体は、被嚢(ひのう)と呼ばれる組織(皮部分)で覆われています。
被嚢(ひのう)は、木などの植物と同じセルロースという成分でできています。
なんと、ホヤの仲間は動物で唯一、セルロースを作ることができるのです!

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一般的に流通されている養殖ホヤは密集した状態で育つためトゲの数が少なく丸みがありますが、
洋野町で獲れる天然ホヤは1個1個離れて育つため、
トゲが伸びてホヤ本来の形状になるようです。
そのトゲトゲとした見た目から
マボヤは、「海のパイナップル」とも呼ばれますが、
もちろん植物ではなく、動物です。
人間と同様に、胃や肝臓、心臓などを持っています。

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漢字による表記では、
古くには「老海鼠」、「富也」、「保夜」などの表記も見られます。
ホヤの名は、「ランプシェードに当たる火屋(ほや)にかたちが似ている」から、
または「ヤドリギ(ほや)にそのかたちが似ている」から。
またマボヤはその形状から「海のパイナップル」と呼ばれることもあります。
なお、俗称でホヤガイ(海鞘貝、ホヤ貝)と呼ばれることもありますが、
軟体動物の一群に別けられる貝類とは全く分類が異なっています。

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マボヤは、動物ですので食事をします。
プラス側の孔(あな)から吸い込んでプランクトンを濾しとって食べて
マイナス側からいらないものを吐き出す「濾過摂食(ろかせっしょく)」という食事スタイルです。

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マボヤにはわかりやすく、
【+(プラス)極 と −(マイナス)極】があります。

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【ホヤの+極】
こちらは入水孔で、エサ(プランクトンやその死骸)を含む海水を取り入れます。

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【ホヤの−極】
こちらは出水孔で海水、排泄物、卵や精子を排出します。

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マボヤの繁殖期は冬。
マボヤはからだの中で精子と卵の両方つくることができて、
放精(ほうせい)と産卵を交互にします。
大きいマボヤだと、1シーズンで産む卵は70万個ほど。
ウニなどの敵がいないところでは、海底一面ホヤだらけのところもあります。

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マイナス極から放出されるマボヤの産卵シーン
写真:宮城県水産技術総合センターさま
※産卵、卵などの貴重なお写真使用許可ありがとうございます!

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受精卵の大きさは0.3mmほど!

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徐々に成長し、

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こんな形に進化。

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受精して2,3日後、孵化して1mmほどのオタマジャクシに似た幼生となり、泳ぎまわることができます。
マボヤが泳ぐ!と言われるのはこのタイミング。
ホヤは成長過程で変態(ヘンタイ)する動物です。
ホヤの幼生は脊索(せきさく)と呼ばれる体の軸を支える背骨のような棒状の器官のある尻尾をもち、自力で泳ぎ回ります。
これがホヤの仲間が脊索動物(せきさくどうぶつ)と呼ばれている所以です。

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その姿から『オタマジャクシ型幼生』と呼ばれています。
体長は約1.8mmほどですが

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すでに、眼点、入水孔(まだ開かない)、平衡器、背側神経、
筋肉、脊索、心臓原基、付着突起(この後、岩にくっつく部分)などの組織をもちます。

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幼生たちは、1,2日間、海の中を泳ぎ回ってその間に一生を過ごす付着する場所を探しに大海原をさまよい、
無事に付着場所の岩などを見つけると、次第に尾部が吸収され、頭部にある突起でそこにくっ付き、その姿を変化させていきます。
この習性を利用して、海中につり下げた牡蠣殻付きロープ(採苗器)でマボヤの幼生を集め(採苗)、マボヤの養殖をします。

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※写真は養殖のための採苗で牡蠣殻に幼生が固着しているところ(宮城県水産技術総合センター)

岩などにくっついた幼生はしっぽが体の中に吸収されていきます。
この時の体長は約0.35mm。しっぽが吸収された分、幼生よりも一度小さくなります。

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10日以上かけて体の中身が90度回転し、入水孔が上側へ移動します。
この時点で、入水孔と出水孔が体の外に出ますがまだ機能はしません。

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成体はしっかりした皮に包まれ、表面にイボイボができます。
入水孔は体のてっぺんに移動し、脊索は完全になくなります。
海底の岩などに固着し、植物の一種と見間違えられそうな外観を持ちます。
入水孔と出水孔は成体になってから機能し始めます。

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成体は、脊索動物の特徴である内柱や鰓裂をはじめ、
心臓、生殖器官、神経節、消化器官などをもつ立派な動物です。
そして1年,2年,3年,4年とあのホヤの姿にまで成長していきます。

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マボヤと日本人との関わりは古く、
平安時代にすでに食用とされていました。
明治時代に入ると養殖が始まり、
ロープにカキの殻をたくさんつけて海中に吊るし、
マボヤが付くのを待つというスタイルは今も昔も同じです。
やがてロープにはたくさんのマボヤや、
マボヤと同じプランクトンを食べる小魚など、多くの生き物が集まり、マボヤの養殖をすることで、海の生物環境も豊かになっていきます。

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脊椎動物に近縁であり、生物学の研究材料として有用です。
血液(血球中)にバナジウムを高濃度に含む種類があります。
現在確認されている中では、
体内でセルロースを生成することのできる唯一の動物であり、
これは遺伝子の水平伝播を示唆していると考えられています。

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生活様式は、群体で生活するものと単体で生活するものがいます。
単体ホヤは有性生殖を行い、群体ホヤは有性生殖、無性生殖の両方を行います。

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ホヤは、世界中の海に生息し、生息域は潮下帯から深海まで様々です。
多くのホヤは植物プランクトンやデトリタスを餌としています。

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海産無脊椎動物には、アルツハイマー型認知症等と関連すると考えられている神経保護物質である
『プラズマローゲン(PlsEtn)』が多く含まれていますが、
ホヤ類の内臓は特にこの物質の含量が多いです。

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ホヤの卵は「モザイク卵」として知られています。
初期発生中の割球を解離したり破壊すると、決まった運命の組織にしか分化しません。
受精後すぐの卵に明確な境界がみられ、
それぞれの領域が将来の各組織に受け継がれることから、
母性細胞分化決定因子の存在が示唆されてきました。
筋肉細胞分化決定因子について、
細胞質移植実験などにより、特にその存在が研究され、
2001年にNishida and Sawadaによりマボヤからmacho-1が同定されました。
ただし、筋肉や表皮などは、自立分化能を持ちますが、
脊索は誘導を必要とすることが示されています。
発生中の各割球が将来どの組織に分化するかを示した「細胞系譜」は、
マボヤではNishidaらによって詳細に示されています。

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ホヤは日本、韓国、フランス、チリなどで食材として用いられています。
海産物らしい香りが強く、マボヤとアカボヤには
人間の体に良い成分が凝縮していると言われています。
マボヤの90%は海水でできていますが、
残りの10%にグリコーゲンや各種ミネラル、ビタミンB12、
亜鉛・鉄分・EPA(エイコサペンタエン酸)・カリウムなど豊富な栄養素が含まれています。

日本では主にマボヤ科のマボヤ(Halocynthia roretzi)とアカボヤ(H. aurantium)が食用にされています。
古くからホヤの食用が広く行われ、多く流通するのは主に東北地方北部沿岸の三陸地方です。
水揚げ量の多い石巻漁港がある宮城県では酒の肴として一般的です。
また北海道でも一般的に食用の流通があります。
多いのはマボヤで、アカボヤの食用流通は北海道などでは少ないです。
食用の種であるマボヤは、
日本では太平洋側は牡鹿半島、日本海側は男鹿半島以北の近海産が知られています。

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ホヤには、天然物と養殖物があります。
特にワタと呼ばれる肝臓や腸には独特の匂いがあり、ホヤ愛好家たちはこの匂いを好みます。
僕も大好きです。
ワタを除去して調理すると独特の匂いがかなり抑えられますが
あの香りが好きな人は除去しないほうがオススメです。

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ホヤの中の水(ホヤ水)にもホヤ特有の香りがあり、
刺身を作る際はホヤ水を使って身を洗ったり、
独特の香りを好むホヤ愛好家たちは、
醤油の代わりにホヤ水にワタを溶いたものをつけて食べたりします。
新鮮なホヤはあまり臭いませんがが、
鮮度落ちが早く、時間が経つにつれて金属臭もしくはガソリン臭と形容されるような
独特の臭いを強く発するようになります。
この匂いすらも大好きだったりします。
冷たい海水に浸しておくと鮮度が落ちにくいです。

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殻から外して取り出したオレンジ色の身を覆うように
トゲの形をした透明なゼリーが新鮮な証です。
時間が経つと消えてしまいます。

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刺身、酢の物、焼き物、フライとして調理され、
塩辛、干物に加工されたりもします。
また、このわたと共に塩辛にした珍味を『莫久来(ばくらい)』といいます。

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蒸しホヤはホヤの旨味を存分味わえます。生の時と違った香りも楽しみの一つです。

ホヤを茹でる時は、半分に切ってワタを取り除いた後、殻がついたままの状態で鍋に入れると、身が縮むのを防ぐ効果があります。
熱が入り過ぎてしまうと身が固くなり旨味が逃げてしまうので
再沸騰させないことがポイントです。

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ホヤの殻で出汁を取ると優しい昆布出汁のようなものがとれます。

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ホヤおじさん

ホヤには旨味と適度な塩気がたっぷり詰まっている「ホヤ水」が入っています。
ホヤ水についてはまた追記します。
一番いいホヤのさばき方、保存方法もまた追記します。


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岩手県大船渡市小石浜漁港

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海中養殖のマボヤ

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パッツンパツンです。

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天然ものと比べるとトゲトゲや穏やかですが
味は抜群です。

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