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まんぼう・マンボウ・翻車魚・Ocean Sunfish・Mola mola

[すし・sushi海の生き物]

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定置網にマンボウが入った。
2005年7月 徳島県沖

悠然と泳ぐマンボウの最後の瞬間だった。

すぐにカメラを抱えて走り、
その船上解体シーンを寿司職人として見ておかなければ。

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漁師さんは残酷にもカギをマンボウの目に引っ掛けて船上に上げた。
他の部位だと簡単な漁具では硬くて刺さらないからだ。ということを
後にその皮に触れて知ることになる。

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海で見ると丸く太陽のような魚に見えることから
マンボウ=sunfishと呼ばれています。

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マンボウは、このように皮に筋目を入れて分厚い皮を分解しながら一つずつ取り外していく。

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これがマンボウの皮。厚みは2cmほど、石灰質のような。
表面はワサビがおろせそうなほどの細かなザラザラ系。
実験しようと思っていたのに
持って帰るのを忘れてしまったのが、この時の一番の後悔。。

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内側には身がついています。

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その場で水揚げされたアオリイカやマンボウを刺身にして出してくださる漁師さん。
ワイルド過ぎる手さばきを見た後のこの一皿は、ありがたくいただきます。

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そして、こちらが マンボウの腸。
英語で
「Intestine of sunfish」

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マンボウ属でいうと、
太平洋、大西洋、インド洋ほぼすべてに分布し、
南極大陸を除く五大陸すべての沿岸域からハワイなどの外洋まで
出現報告があり、北極と南極を除く世界中の海に生息していると考えられています。
日本でも北海道から沖縄まで全国各地に出現します。

動物界 Animalia
脊索動物門 Chordata
脊椎動物亜門 Vertebrata
条鰭綱 Actinopterygii
フグ目 Tetraodontiformes
フグ亜目 Tetraodontoidei
マンボウ科 Molidae
マンボウ属 Mola
マンボウ Mola mola

マンボウ科には、マンボウの他に
ヤリマンボウ、ウシマンボウ、クサビフグなどがいます。

卵から孵化したマンボウは、成長とともに全身がトゲトゲになり、大きさ的にも
その形はお菓子の金平糖(コンペイトウ)に似ていると良く言われます。
尾ビレは無く、上下に背ビレと尻ビレがあり全長約5mmほどです。
まだ泳いで逃げる力も弱い稚魚は、こうしてトゲトゲによって身を守ろうとしています。
その後、
体が縦長になり、体の大きさに対して全身のトゲの大きさが小さくなります。
尾ビレの代わりに舵ビレ(かじびれ)ができ始めます。この時の全長は約1.5cmほどです。
この時期を経てると
今度はトゲがほとんどなくなり、腹部が大きく膨らんできます。
舵ビレはまるみを帯びて背ビレや尻ビレとつながります。
この時の全長は約6cmほどです。
そして、膨らんでいた腹部がへこみ、
舵ビレが大きく発達し、バランス良く泳げるように背ビレと尻ビレが対称に長く伸びて、
一般的なマンボウの形へと成長します。
マンボーは魚界の子宝ナンバーワンとも言われていて
約3億個もの卵を産める体の構造をもっていると考えられています。
それでも海がマンボウだらけにならないのは、
敵に食べられてしまい、大きく成長出来るのはほんのひと握りだからです。

マンボウは狙って獲る魚ではなく、
たまたま定置網などにかかってしまい上がる場合がほとんどで、
味としてはさっぱり美味ですが、鮮度落ちが早く、すぐに生臭くなってしまうので、これまでは基本的には水揚げされた港界隈で食されていました。
たまに、海面に横たわって浮いているマンボウに対して、
突きん棒(モリ)で刺して漁獲することもあります。

世界的に見ると主にアジア圏で食されていて
日本では、特に岩手県から千葉県まで、
東伊豆、三重県紀北町や尾鷲町は比較的多く食されています。
また、紀北町にはマンボウの名称のある道の駅もあり、
マンボウのフライ定食が提供されています。
ちなみにマンボウを食べる地域では、
スーパーに切り身が売られています。
最近では、流通事情もよくなり、
都市圏の魚売り場でも売られていることがあります。

1636年の『料理物語(寛永十三年版)』に最古と思われる料理法が載っており、
徳川光圀(水戸黄門)もマンボウを食べたとされています。
台湾では5月に海流に乗って東海岸に現れるマンボウを定置網で捕り、
盛んに食用にしているそうです。

肉の部分を刺身で食べると
味の薄いイカ刺しのような、
ぷるぷるとした味の抜けたタラのような
そんな味わいです。
文献上でも『めちゃくちゃ美味しい!』という人もいれば、
『もう二度と口にしたくないくらいマズい。』と書いている人もいるようです。
刺身以外でも、焼いたり、ネギ塩で炒めたり、アヒージョにして食べられています。

生き物の数え方は通常、1匹、2匹・・・で、
魚の場合は1尾、2尾・・・と数えることもありますが、
マンボウの場合は1枚、2枚・・・という単位でも数えられます。
これは、マンボウん形が平べったく、畳(たたみ)に見立てたことに由来します。
漁師さんは、マンボウの大きさも畳の枚数で表現することが多いです。
この大きなマンボウは畳3枚だな。
みたいな感じです。

マンボウの肉は、放っておくと水になって消えるという噂がありますが
実際、マンボウの筋肉中の水分含有量は90%近くと言われていますので、
放置しておくとどんどん水分が出てきて縮んできます。
ただ、残りの10%の肉が残るので完全に消えることはありません。

【マンボウの身の調理法】
4,5cmの一口大に切って、茹でて、沸騰したらザルにあげて茹で汁を切る。
あとは、味つけて煮るなり、好みの調味料とどんな料理にしてもOK。
冷凍もマンボウの場合は、自然解凍して
4,5cmの一口大に切って水から茹でて、沸騰したらザルにあげて茹で汁を切る。
あとは、味つけて煮るなり、好みの調味料とどんな料理にしてもOK。

腸に関しては
身よりもそこまで鮮度落ちが早くないので
現在の流通技術で十分に良い状態で市場に出回っています。
僕たちはこれを
【マン腸(まんちょう)】と呼んでいます。
食感を例えるならミノ(ウシの第一胃)に近い感じです。

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酢飯屋では
マンボウの腸は味噌漬けにして焼いて握ります。
様々な日本酒との組み合わせをこれまでも展開してきました。

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そしてこちらが
『マンボウの腸の八丁味噌煮込み』

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ヘルシーなホルモンの煮込みは八丁味噌と合わさって
上品な煮込みになります。

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マンボウの腸
マンボウのサイズによって、もちろん腸の厚みも変わってきます。
歯ごたえシャッキシャキです。

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マンボウの腸を味噌漬けにしているところです。

お味噌は秋田県横手市『羽場こうじ店』さんの二倍麹味噌です。

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『マンボウの腸の味噌漬け炙り寿司』にバッチリ合うペアリングを探ります。

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ずらりと用意した『マンボウの腸の味噌漬け炙り寿司』


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どのお酒で、どの温度帯が合うのか。
様々なお寿司とお酒でこれを探るのがいつも本当に楽しいです。

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今回のお酒のラインナップでは
こちらの『十旭日(じゅうじあさひ)』改良雄町60 純米吟醸原酒が
1位でした。
銅のチロリで53度 大きめの平杯で飲むと合うことがわかりました。
まず、お米と合う。
噛んでいても合う。
お酒を飲み込んだ後に味噌の旨味が爆発する。
酸味もいい仕事をしている。
温度帯が下がるとチーズのような香りがする。
温度が変わっても全然合う。
アタック〜中盤〜終わり〜余韻までずっと美味い。
そんな結果となりました。

その後の実験では
2位は、芳水 山廃純米生原酒 銅チロリ 60度 大杯
おちょこも熱々にしておいて、
マンボウの腸の味噌漬け炙りを熱燗で改めて温めてあげる感じがいい。
寿司を口に入れて、中盤でお酒を含み合わせる。

3位は、川鶴 讃岐くらうでぃ 錫チロリ 30度 小杯
甘酸っぱいさらっとしたヨーグルトのような味わいのお酒なので、
ヨーグルトと味噌が合わさり、落花生のような香りと味わいに変化します。

4位は、菊姫にごり酒 銅チロリ 70℃ 大杯
こちらもあつあつのおちょこを準備してお酒もあっつあつで。

5位は、仁井田 自然酒 錫チロリ 46℃ に常温垂らし 44℃ 大盃で。

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マンボウロゴ

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こちらが、マンボウの卵巣
一度に産卵する数世界一と言われています。
その数はおよそ3億個。
でもそのほとんどが、大人になるまでに他の魚に食べられてしまいます。

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今回は1トンを超えるウシマンボウの腸を
佐島より手に入れました。
マンボウの腸と味の違いがあるのか、楽しみです。


【マンボウのひみつ】

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2018年1月27日 池袋 サンシャイン水族館にて
マンボー博士 澤井悦郎さんの講演会に行ってきました。

この日学んだことを記しておきます。

フグ目マンボウ科マンボウ属
日本近海で確認されているマンボウは
・マンボウ
・ウシマンボウ
・ヤリマンボウ
・クサビフグ

南半球でしか今の所確認されていない新種
・カクレマンボウ(Mola tecta)
tectaはラテン語で「隠された〜、秘密にされた〜」という意味。
2017年に皮膚サンプルのDNA解析によって初めて別種の存在が判明したもので、
外見ではマンボウとの区別が容易ではないため、
従来はその存在が認知されなかったいわゆる隠蔽種であることに由来。
同様の理由で 和名も「カクレマンボウ」と名づけらたそうです。


アカマンボウ(Lampris guttatus)は
アカマンボウ目アカマンボウ科 (Lampridae) に属する深海魚。
別名、マンダイ。
体型はマンボウ (Mola mola) に似ていますが
マンボウの仲間ではなく、リュウグウノツカイに近縁の魚です。

マンボウは尾鰭(おびれ)がなく、舵鰭(かじびれ)があります。
ちなみに、マンボウは白身ですが、アカマンボウは赤みです。

澤井悦郎博士の著書『マンボウのひみつ』。
なんと、マンボウに関しての本は、江戸時代以来200年ぶり。
表紙の絵にもこだわりが。
奥に描かれた小さいのがマンボウ。
手前に大きく描かれているのがウシマンボウ。
ウシマンボウに寄り添う掃除魚(Cleaner fishes)として
マグロヒジキムシやクロコバン、
周りに泳ぐのは、オトメベラ、ミゾレチョウチョウウオ、
タテジマキンチャクダイ、ムレハタタテダイなども細かく描かれています。
ウシマンボウのサイズ感がわかるように、ダイバーも。

日本の水族館でのマンボウ飼育の歴史
1950年代 最長10日間しか飼育できず。
1960年代 21日間飼育可能に。
1970年代 1ヶ月以上の記録達成
1979年  鴨川シーワールドで1年以上の飼育達成。
1990年  鴨川シーワールドで8年2ヶ月という世界最長飼育記録達成(現在も世界一)

ちなみに
ヤリマンボウの最長飼育記録は43日間
クサビフグは24時間が最長記録

水族館ではマンボウの個体交換を定期的にしている。
大きくなり過ぎると大変なため。

マンボウは海中での上下移動が激しいですが
表面水温だと16〜20度が適水温。

マンボウは淡水では水を吸収し過ぎて生きられない。

マンボウのフン(排泄物)は白い粉状。アンモニア態窒素(強毒)が含まれている。
それを微生物が分解して亜硝酸態窒素に。
それをさらにバクテリアが分解して硝酸態窒素(弱毒)になる。
ちなみに尿は無色透明。

マンボウの一般的な遊泳速度は秒速60cm。
秒速250cmの黒潮にも逆らって泳げる。

2000年代前半まで、マンボウは図鑑には出ているけど論文は皆無。
マンボウを飼うためには、生態の基礎知識が必要。
日本では水族館が整体の研究を始めた。
飼育→死亡→解剖の繰り返し。

マンボウとカツオは生息域の水温が近いので
マンボウが見つかると、カツオもいる!ということで
1960年代以前は 漁師から『大漁の神』と呼ばれていた。
ちなみに
水族館にマンボウが登場するまでは漁師さんくらいしかマンボウを知らず
世間的にはかなりマイナーな魚だった。

ハズバンダリートレーニングをマンボウにもしている。

【マンボウの寄生虫事情】
・単生類、カイアシ類
・腸の中には条虫、吸虫

【エサ事情】
エビ・イカ・貝・牡蠣・アジなど
骨や殻は除去して、ミキサーですりつぶして
ビタミン剤や虫下しの薬を添加して団子状にして与える。
1日2回、体重の0.3〜3%の給餌率。
エサは噛まずに吸い込んで食べる。

性格はおとなしい。
イルカに体当たりされても、天敵に食べられても
逃げない時がある。
捕食の際は、積極的に小魚を追いかける。
マンボウは活発に泳ぐ魚。

約1秒間に1回ほど、ヒレを振る。
場合によりたくさん振っても呼吸があらくならないことが確認されている。

皮下ゼラチン層は、海水より比重が軽く、浮力の役割をしている。
(マンボウには浮き袋がないため。)

群れを好まない。

飛び上がるほどではないが、水中から勢いをつけて海面をジャンプする。

水族館の水槽では壁にぶつからないように透明のビニールシートで水槽全体を
覆ったりしているが、まだまだ壁に口から衝突し、タラコ唇になってしまう。

日本は水族館に『魚医』がいないので獣医が診断する。

日本は世界最多のマンボウ飼育国。

飼育下で研究された海外の事例はほぼ皆無。

2018年現在、日本の水族館のマンボウ研究は停滞期。


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マンボウの子供が綺麗に乾かされたもの。

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深海が好きなチョークアートデザイナーズ協会熊木さんの作品。

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マンボウ愛を感じます。

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写真左がマン帽子を被って、マンボウや水族館について
熱弁してくださったマンボウ博士の澤井悦郎さん。


こちらが澤井悦郎さん著者の
『マンボウのひみつ』(岩波ジュニア新書)

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なんと、マンボウに関しての本は、江戸時代以来200年ぶり。

ネット上では、マンボウ最弱伝説やマンボウの都市伝説などが
色々と書かれていますが、現在の本当の最新情報が知りたい方には
オススメの一冊です!

表紙の絵にもこだわりが。
奥に描かれた小さいのがマンボウ。
手前に大きく描かれているのがウシマンボウ。
ウシマンボウに寄り添う掃除魚(Cleaner fishes)として
マグロヒジキムシやクロコバン

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周りに泳ぐのは、オトメベラ、ミゾレチョウチョウウオ、
タテジマキンチャクダイ、ムレハタタテダイなども細かく描かれています。
ウシマンボウのサイズ感がわかるように、ダイバーも。

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そして、帯紙はなんと!
さかなクン先生!

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すぎょい!

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カクレマンボウのチョークアートもありました。

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サンシャイン水族館、営業時間終了後に催されたこの企画。
海の生き物が大好きな方々が
愛をもって真剣に参加されている印象でした。

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今後も色々な勉強会の開催楽しみにしています!

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ちなみにこちらが水族館のマンボウ

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透明な水槽にぶつかって、どうしても口がタラコ唇になってしまいます。

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サンシャイン水族館 
sunshine aquarium
ホームページ http://www.sunshinecity.co.jp/aquarium/index.html