郷土寿司プロジェクト

2016.05.03

丹後ばらずし

[京都府京丹後市]

A91A0437_ENDHRS.jpg

今回は「丹後ばらずし」です。
実は京丹後に着いてから、結構見かけるのです。
レストランでは大抵メニューにあるし、スーパーでも売っている。
郷土寿司は家で作るものが大半で、
お店では食べられないものが多い中ではちょっと珍しい。

ここではお祭りや結婚式などの祝い事、
それに子どもの運動会などのお弁当として大活躍。
ハレの日だけでなく、
お葬式など大勢の人が集まる席では定番の料理になっているようです。
こうした地元でよく食べられていて、愛されているという点も、
絶滅危惧種的郷土寿司が多い中では珍しい存在です。

教えていただくのは、ばらずし歴50余年の山添美智恵さん。地域で採れた特産物や身近な旬の食材を使ったレシピなどを研究し、料理教室なども主催。3年前から「ばらずしで丹後をつなぐ会」の活動もしています。なにしろ、持ってきていただいた宮島(しゃもじ)から、「まつぶた」という木箱まですべて自分の名前入り。使いやすいように職人に特注でつくってもらったというから、ばらずしへの愛は相当深そうです。

A91A0481_ENDHRS.jpg

A91A9787_ENDHRS.jpg

サバの缶詰がドドっと目に入ります。
「なぜ、サバを使うかというと、この辺りは昔からサバがよく獲れたんです」と山添さん。
本来は焼きサバをじっくりと1時間ぐらい煮付けていたようですが、
手間も時間もかかると
今はもっぱら地元の人は缶詰を代用しているみたいです。
実は京丹後のスーパーではほかの地域ではあまり売られていない、
280グラム入り特大サイズのサバ缶が並んでいるのです。
それだけ皆さん、よくばらずしを作っているということですね。

A91A9752_ENDHRS.jpg

4M7O0124_ENDHRS.jpg

4M7O0138_ENDHRS.jpg

なので、今回も缶詰からつくったおぼろをつかいます。
やや深めで厚手のなべのふたなどにサバをあけて、
しゃもじでつぶしながら炒め煮をする。
汁気がなくなったら、砂糖を加え、最後に醤油を入れてほぐします。
全体に甘めな感じです。
このほぐす作業は家では子どもたちが手伝ったりするようです。
山添さんはこうした共同作業に目をつけて、
地元の未婚男女を集めたばらずしの婚活イベントを企画したそうな。
かなりのアイデアウーマンです。

4M7O0150_ENDHRS.jpg

A91A9732_ENDHRS.jpg

A91A9685_ENDHRS.jpg

A91A9671_ENDHRS.jpg

A91A9796_ENDHRS.jpg

A91A9817_ENDHRS.jpg

A91A9829_ENDHRS.jpg

A91A9837_ENDHRS.jpg

A91A9994_ENDHRS.jpg

そのほか、ちらす具は
かんぴょう・高野豆腐・しいたけの甘煮、インゲン豆、かまぼこに錦糸卵。
このあたりはあまり決まっておらず、
そのときにある野菜や全体の色合いで選んでいけばいいそうです。

4M7O0238_ENDHRS.jpg
この自家製の紅生姜の色が入ることでかなりしまります。

具材の準備と並行して酢飯も用意しておきます。

A91A9844_ENDHRS.jpg

A91A9882_ENDHRS.jpg

A91A9893_ENDHRS.jpg

A91A9907_ENDHRS.jpg

A91A9960_ENDHRS.jpg

A91A9966_ENDHRS.jpg

A91A9969_ENDHRS.jpg

4M7O0231_ENDHRS.jpg

具がそろったら、まつぶたに詰めていきます。
まつぶたは側面だけが取り外せる優れもの。
ばらずしをきれいに切り分けられるように工夫されているのです。
酢飯の間にサバをはさむ2段式か、
酢飯の上だけにちらすのかは地域や家によって異なりますが、
今回は2段式で。
酢飯をたっぷり目に詰めて手で軽く押し、
サバ、次いでかんぴょうをちらした上にさらに酢飯を詰める。
その上にサバとかんぴょうだけでなく、ほかの具もちらしていきます。

A91A0031_ENDHRS.jpg

A91A0051_ENDHRS.jpg

A91A0058_ENDHRS.jpg

A91A0059_ENDHRS.jpg

4M7O0251_ENDHRS.jpg

A91A0080_ENDHRS.jpg

A91A0087_ENDHRS.jpg

4M7O0263_ENDHRS.jpg

A91A0103_ENDHRS.jpg

A91A0114_ENDHRS.jpg

A91A0132_ENDHRS.jpg

A91A0143_ENDHRS.jpg

A91A0167_ENDHRS.jpg

A91A0187_ENDHRS.jpg

A91A0196_ENDHRS.jpg

A91A0221_ENDHRS.jpg

こうして完成したばらずしはなんとも色合いが華やかで、
すぐにでもかぶりつきたいほど美味しそう。
食べないときはふたをしておくと乾かないし、
上からぎゅっと押しておくと切り分けやすくなるそうです。

A91A0253_ENDHRS.jpg

A91A0264_ENDHRS.jpg

A91A0303_ENDHRS.jpg

A91A0315_ENDHRS.jpg

4M7O0282_ENDHRS.jpg

4M7O0285_ENDHRS.jpg

4M7O0293_ENDHRS.jpg

A91A0341_ENDHRS.jpg

A91A0353_ENDHRS.jpg

A91A0366_ENDHRS.jpg

A91A0377_ENDHRS.jpg

A91A0384_ENDHRS.jpg

A91A0389_ENDHRS.jpg

A91A0399_ENDHRS.jpg

切り分けると、なんだかケーキのようでもあります。
山添さんは、
子ども会でシフォンケーキなどをつくる容器に入れて「デコレーションずし」として出したことがあるとか。
「もう、大受けでした」と子供のような無邪気な笑顔で話してくれました。

A91A0402_ENDHRS.jpg

A91A0434_ENDHRS.jpg

A91A0437_ENDHRS.jpg

実際に食べてみると、ひと口でいろんな味がします。
そしてサバのそぼろの甘辛さが絶妙な感じで口に広がり、
そこに自家製の紅生姜が色合いと味を引き締めて美味しい! 
正直、押しずし系は一皿食べたらもういいやとなるものが多い中、
ばらずしはどんどん食べたくなります。

残った分を翌朝、食べたら、酢がなれてしっとりとしてまた美味しかった。
朝からこんなにさくさくと寿司が食べられることもあまりないですね。
とにかく、郷土寿司の取材をしていて感じるのは、
つくった2日目にさらに美味しくなる郷土寿司が多いこと。
足が早い錦糸卵だけ取りのぞけば、4日ぐらいは食べられるかも。
「冷凍して保存し、蒸して温かくしても美味しいです」と山添さん。
A91A9775_ENDHRS.jpg

A91A0471_ENDHRS.jpg

A91A0536_ENDHRS.jpg

山添さん、
そして一緒にばらずしづくりを手際良く手伝っていただいた
京都府丹後広域振興局の山口香里さん、田茂井加奈さん
どうもありがとうございます。
教えていただいた郷土寿司、しっかりと受け継がせていただきます!

A91A0644_ENDHRS.jpg

●「丹後ばらずし」と出会って
地元で愛されているばらずし。その愛されている理由がわかりました。ひとつは美味いこと。そしてもうひとつは家庭でつくりやすいことです。子どもも喜んで食べるので、なにかあればつくろうとなりやすいし、魚をおろすわけでもないので、「今晩つくろう」と思い立ってもすぐに、簡単につくれてしまう。
寿司職人の僕からすると、缶詰を使うのは普通すぎる感じですけど、そこは割り切ってもいいかも。サバに関してはアレルギーの人もいるので、ほかのサンマやサケなどの魚系の缶詰で代用してもできそうです。上にちらす具も自由度があるのがいいですね。
おうち寿司としては、そのまま使える、かなり完成度が高いと言えるでしょう。

(撮影:遠藤宏)

詳しいレシピは『季節のおうち寿司』PHP研究所にございます。