郷土寿司プロジェクト

あゆず寿司(あゆずずし)

[福島県矢祭町]

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2019年 福島県矢祭町(やまつりまち)
鮎(アユ)と柚子(ユズ)が特産のこの町で
新しく郷土寿司を作る機会をいただきました。

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こちらの建物が今回の会場『リフレッシュふるさとランド』です。
住所:福島県東白川郡矢祭町大字東舘字舘6-1

この舘山は、矢祭町の中心地である東舘地区内にあり、
矢祭町の歴史を明らかにする貴重な資料が埋蔵された宝庫です。
保全林の整備を機に徹底的な調査を行った結果、舘山の全容があきらかになったそうです。
発掘調査を行った東舘は、ほぼ戦国時代に使用された山城の跡です。
東白川郡にも多数の舘跡がありますが、
当時の文書にその名が出てくるものは五つしかありません。
その一つが矢祭町の舘山にあった東舘です。
現在残っている当時の文書はほとんどが当時の武士の間でやりとりされた書状ですから、
その書状にこの東舘の名前が見えると言うことは、
当時の東舘が如何に重要な役割を果たしていたかということを物語っていると思います。

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東舘は白河結城氏によって破却された後、
佐竹氏の前線基地・補給基地として利用されました。
途中から守りよりも平坦地を多く確保する構造に造り変えられています。
また、縄文時代早期(今から約5000年前)の落とし穴も発見されています。
中世になって城として利用される遥か昔からこの東舘の地は
人々の生活に密接な関係を持っていたことがうかがわれます。
現在、舘跡にはリフレッシュふるさとランドが建っており、
残念ながら主郭部分は見ることができなくなってしまいましたが、
それ以外の部分は今でも遺構が見ることができます。

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宿泊施設も兼ね備えたこの場所の一角に
大型のキッチンスペースがあります。
今回は、ここで矢祭町のみなさまと一緒に新郷土寿司を作りました。

郷土寿司の多くは、
ご自宅で簡単に作れることが大切になってきます。
簡単で美味しいものでなければ
なかなか作ろうと思いませんし、
作られなければ受け継がれていくことは難しいからです。
地元で手に入る食材と、家にある道具で
いかに再現性を高めるかが新郷土寿司の創作に必要な要素です。


では、さっそく作っていきたいと思います。

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肛門からフンを押し出し、水で軽く洗ったアユを

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オーブンで丸焼きにします。

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まな板の上に取り出し、

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頭、背ビレ、腹ビレ、胸ビレ、尻ビレ、尾ビレ、中骨を
全て外し、身だけにしていきます。

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お寿司にする際に、少しでも硬い部位や、小骨など
口に入れた際、ちょっとでも気になるようなものは
すべて、この時点でより分けるのが最大のポイントです。
小骨が当たったせいで、この美味しいお寿司が嫌われてしまっては勿体ないからです。

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内臓を囲って守るように配置されたヒョロっと長い腹骨も
一本も入ってはいけません。しっかり抜き取って、身を細かく刻んでおきます。

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先ほどの硬い部分など骨やヒレ類は、少しの油で全てカリカリに骨ヒレせんべいの様に揚げて、
ザクザクと細かく刻み

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味噌、刻み柚子、刻みネギと一緒に

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混ぜて、

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『あゆず味噌』を作ります。
いちいち書きますが、『あゆ』と『ゆず』で『あゆず』です。

アユの骨まで全て食べる新しい郷土寿司。

 同時進行でご飯を火にかけておき、

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刻み柚子とゆず果汁、お砂糖、酢を混ぜた柚子寿司酢を

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炊き上がったご飯にかけていきます。
高知県の『ゆの酢』に習ったものです。

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お米を潰さないようにサラサラと酢飯を切っておきます。

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柚子酢飯に、先ほど刻んだ焼きアユの身を混ぜ込み
『あゆず酢飯』を作ります。

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ゴマ、ミョウガ、大葉など、薬味はお好みで自由に柔軟に。

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薬味などは全てこのタイミングで混ぜ込みます。


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これを手まり寿司の要領で一口大に丸めていきます。
一発で桶や器に綺麗に盛り付けられたら良いですが、
一度、バットなどに作りおき、その後、バランスをみながら盛り付けると綺麗に盛り付けられます。

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一口大の大きさは人それぞれですので、
大小様々。
それでOKです。

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あゆず寿司は、たくさん盛り付けるととてもカワイイです。

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使用食材がシンプルなだけに、見た目も地味なあゆず寿司。
器には、季節の植物も一緒に盛り付けするのがオススメです。

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あゆず寿司の完成です。
そのままでも美味しいですし、

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あゆず味噌をのせて
香ばしさと塩気を追加しても美味しいです。

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別室で試食タイム

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今回のお寿司のコンセプトの確認や、作り方のおさらいをお話して

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いただきます。
アユの身の特有の香りと味、
アユの骨の香ばしさ、
ゆずの酸味と香りなどが
口の中で色々広がるお寿司となりました。

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後日、『あゆず寿司を巻物に仕立てたよ!』と地元のお母さんから連絡をいただきました。
こうして少しずつ、町の郷土寿司として受け継がれていきますことを願っています。

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